直腸癌の術前に行う画像診断は,①がんの位置・局在・肛門からの距離,②がんの深達度や浸潤・所属リンパ節転移,の2つの情報を得るのが目的である。以前は①は主に注腸造影,②はCTを用いて評価が行われていたが,近年,注腸造影の代わりにCT colonographyを用いたり,②の目的でCTに加えMRIを撮影する施設が増えている。また,リンパ節転移や遠隔転移の除外目的でFDG-PETを撮影する施設もある。中でもMRIはその高い解像度により切除マージンの評価にきわめて有用であるとして,近年,欧米を中心に注目されている。
2002年から03年にかけ欧州の5つの国で直腸癌の術前検査としてのMRIの有用性,特にcircumferential resection margin(CRM)の評価におけるMRIの意義を検討するMERCURY試験が行われた。06年の一次報告では,MRIはCRM陰性を92%の特異度で予測することができたとしている1)。また,11年の予後解析では,MRIにて術前CRM陽性が示唆された症例は有意に局所再発,無再発生存率,全生存率が不良であった2)。さらに,MRIにて評価した腸管外の浸潤距離や,腸管外における静脈侵襲の有無も重要な予後因子であった3)。MRIによる腫瘍の浸潤や転移の評価は,主にT2強調画像を用いて行われるが,拡散強調画像などの撮像法により腫瘍の悪性度や血管新生の予測にも応用しうるのではないか,と期待されている。
【文献】
1) MERCURY Study Group:BMJ. 2006;333(7572): 779.
2) Patel UB, et al:J Clin Oncol. 2011;29(28): 3753-60.
3) Taylor FG, et al:Ann Surg. 2011;253(4):711-9.
【解説】
1)川合一茂,2)渡邉聡明 東京大学腫瘍外科 1)特任講師 2)教授