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代謝性アルカローシス[私の治療]

No.5158 (2023年03月04日発行) P.44

長澤 将 (東北大学病院腎・高血圧・内分泌科講師)

登録日: 2023-03-03

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  • 代謝性アルカローシスは,動脈血ガスのpH>7.45で定義される。代謝性アシドーシスと対比して考えるとよいが,代謝性アルカローシスは血中のHCO3が増加した状態であり,臨床的には酸の喪失(嘔吐による胃液の体外への流出,ループ利尿薬の長期投与による使用)がほとんどである。
    代謝性アルカローシスをきたす疾患としては,原発性アルドステロン症が有名である。この病態ではNa再吸収,K排泄,H排泄の亢進による高血圧,低カリウム血症,代謝性アルカローシスを呈するが,難治性高血圧や低カリウム血症が問題になり,アルカローシスが問題の中心になることはほとんどない。

    ▶診断のポイント

    何よりも病歴と問診が必要である。ボディイメージに問題を持つ神経因性食思不振では,繰り返し嘔吐することがある。このような患者では歯の状態(最近はマスクをつけている人が多いのでわかりにくいが)や,指に吐きタコがあるかなどを観察する(それ以前にだいたいは極端な痩せで,ある程度想定できる)。この場合には心療内科や精神科との連携が必要である。

    またループ利尿薬を長期間にわたって使用している場合には,低カリウム血症,低マグネシウム血症を伴うアルカローシスを認めることがある。特に,ダイエットと称してループ利尿薬を服用していることがしばしばあるので,疑った場合にはMgを含む血液検査で確認することが必要である。この場合には利尿薬の中止や回数の減少が治療の中心となる。

    これら以外で代謝性アルカローシスを認めた場合には,尿中のClをみることが重要になる。嘔吐は胃酸中のHClが体外に排出されるので,尿中のClは低値を示す。具体的には尿Cl<10mEq/Lでは,嘔吐などによる喪失があると考えて,Clを含む食塩水などでの加療が基本となる。この場合もアルカローシスで困るというよりは,脱水が問題のメインであり,Cl反応性の代謝性アルカローシスと分類される。稀ではあるが,胃液を経鼻胃管などから持続的に吸引している場合にも起こりうる。

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