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単純ヘルペス脳炎[私の治療]

No.5159 (2023年03月11日発行) P.40

中嶋秀人 (日本大学医学部内科学系神経内科学分野教授)

登録日: 2023-03-09

最終更新日: 2023-03-07

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  • 単純ヘルペス脳炎は,三叉神経節などに潜伏した単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus:HSV)が再活性化後に側頭葉や前頭葉に侵入して,出血や壊死病変を呈する病態を言う。成人における散発性の急性ウイルス性脳炎の中で最も頻度が高く,急性脳炎全体の中では15~20%を占める。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    発熱,頭痛,上気道感染症状で発症し,数日後に意識障害,痙攣,異常行動,健忘症など,多彩な高次脳機能障害を示す。

    【検査所見】

    単純ヘルペス脳炎の病変部位として,側頭葉と辺縁系が好発部位であり,MRI画像所見では側頭葉内側面,前頭葉眼窩,島回皮質,角回に高頻度に病変を認める。確定診断には脳脊髄液を用いた高感度PCR法でHSV DNAが検出されることが必要である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    アシクロビルが第一選択薬であり,免疫正常例では14日間,免疫不全例では21日間投与する。高感度PCR法にて脳脊髄液中のHSV DNA陰性を確認してアシクロビルを終了し,陽性であればアシクロビルを1週間追加して再度検査する。

    アシクロビルは単純ヘルペス脳炎のタイムクリティカルな救急治療のため,臨床症状と検査所見から単純ヘルペス脳炎が疑われれば直ちにアシクロビルの投与を開始し,診断のための検査と治療を同時並行で進める。

    副腎皮質ステロイドはウイルス感染時の宿主免疫反応による細胞傷害性を伴う炎症反応を抑制すると考えられ,アシクロビルと併用する。

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