1 逆流性食道炎の内視鏡的重症度分類
逆流性食道炎は,酸性域に至適pHを有する蛋白分解酵素ペプシンと塩酸である胃酸が食道に逆流して発症する。
逆流性食道炎の内視鏡的重症度分類は,病態の違いを表している。食道に縦走するびらんのみが形成される「軽症逆流性食道炎」では,病変は食道下端部の右前壁に形成されやすく,酸逆流は主に日中の食後に起こる。
一方,縦走するびらんに加えて,横走するびらん・潰瘍を伴う「重症逆流性食道炎」では,病変が食道下端部の後壁に形成されやすく,日中よりも夜間の酸逆流が重要である。全逆流性食道炎のうち90%以上は軽症例で,重症例は10%以下を占めるにすぎない。
2 合併症は,軽症逆流性食道炎では起こりにくい
逆流性食道炎の合併症には出血や狭窄などがあるが,これらは重症逆流性食道炎に高頻度に起こりやすい。
3 軽症例と重症例では,治療目標が同じではない
軽症例は合併症をほとんど伴わず,重症化することもほとんどない。このため,軽症例の治療目標は粘膜病変の治癒よりも,自覚症状の消失とQOLの改善にある。一方,重症例では合併症発症を予防するため,自覚症状の消失に加えて,粘膜病変の治癒状態の維持が治療目標となる。
4 逆流性食道炎の治療薬(第一選択薬は胃酸分泌抑制薬)
治療には胃酸中和薬や,胃酸分泌抑制薬であるヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2RA)・プロトンポンプ阻害薬(PPI)・カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)などが使用される。
これらの薬剤は胃酸分泌抑制力だけではなく,胃酸分泌を主に抑制する時間,酸分泌抑制作用の発現スピード等,多くの点で異なっている。薬剤の特性を理解し,それぞれの患者に最適な薬剤を選択することが必要である。
重症例では,1日1回投薬で日中に加えて夜間の胃内pHも高く維持できるP-CABが第一選択薬である。
5 生活指導・食事指導も忘れずに
生活指導と食事指導は期待以上の効果がある。症状の改善により胃酸分泌抑制薬の投薬中止が可能となることもあるので,ぜひ実施すべきである。
特に肥満の改善,大食・高脂肪食を控える,睡眠時上半身挙上などは有効性が高い。
伝えたいこと…
軽症逆流性食道炎と重症逆流性食道炎が互いに移行することは多くはなく,発症病態も異なっている。この2つは別の性格を持つ疾患であると考えて,治療をすることが望ましい。