褥瘡は,患者が長期にわたり同じ体勢で寝たきり等になった場合,体と支持面(多くはベッド)との接触部位で血行が不全(虚血)となって,周辺組織に壊死・潰瘍を起こすものを言う。加齢による変化(脂肪・筋肉量の低下,骨突出,免疫能低下,知覚低下,創傷治癒力低下など)によって,高齢者では褥瘡が生じやすく治りにくい。骨突出部に好発する。弾性ストッキング,非侵襲的陽圧換気(NPPV)マスクなどの圧迫による医原性潰瘍(医療関連機器圧迫創傷)も褥瘡に含まれる。
褥瘡の好発部位(圧迫が加わる部位,骨突出部位)に紅斑が観察された場合,体位交換により圧迫を解除し,30分以上経過しても残る紅斑は褥瘡の始まりと判断する。広がりを持つ紫斑を呈する場合,深達性褥瘡に至る可能性が高い。
壊死が脂肪織以下に及ぶ深い褥瘡の創面は,黒色→黄色→赤色→白色と変化しながら治癒に向かうことから,黒色期,黄色期,赤色期,白色期の4期に分類される。創の状態を観察し,褥瘡創面の色調による病期分類を行い,治療方針を決定する。
黒色期は塊状の黒色壊死物質が創面に固着した状態である。壊死組織除去,感染の制御を行い,「肉芽形成のための環境づくり」を治療目標とする(wound bed preparation)。壊死組織は肉芽形成を妨げるばかりでなく,細菌感染の温床となるので,速やかに除去することが望ましい。壊死組織の除去は外科的デブリードマンが第一選択である。
固着し乾燥した硬い黒色壊死の除去を目的とした外用薬として,スルファジアジン銀を使用することが推奨される。スルファジアジン銀は,壊死組織の自己融解を目的に,乾燥した壊死組織に対して広く使用されている。銀による抗菌効果を持つ。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を含めた黄色ブドウ球菌のバイオフィルム形成を抑制する。ブロメライン含有軟膏(ブロメライン軟膏)は,パイナップル果汁に含まれる蛋白分解酵素を含有する製剤であり,壊死物質除去能を有する薬剤である。創部以外の皮膚に軟膏がつかないように,ワセリンなどの油脂性基剤の軟膏で保護することが勧められる。
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