新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけの5類移行やかかりつけ医機能報告の制度化、オンライン資格確認導入の原則義務化、急激な物価高騰など、医療機関を取り巻く環境が大きく変化している。
中でも影響が大きいのは、2023年4月から原則義務化されたオンライン資格確認。オンライン資格確認の義務化に当たり、全国保険医団体連合会(保団連)は2022年10月、会員を対象に調査(n=4747)を実施した。「システムの導入状況」についての質問では、「運用開始済」が26%にとどまる一方、「準備中」は54%、「導入しない・できない」は16%で、導入が進んでいない状況が明らかとなっている。
運用を開始した医療機関への「運用開始の実態、懸念・不安は?」という質問では、「利用する患者がほとんどいない」が83%に達し、従来の保険証からの移行が進んでいないことも浮き彫りとなった。また「有効な保険証が無効となった」「カードリーダーの不具合」などトラブルの報告も少なくない。
オンライン資格確認を巡っては、整備が遅れている医療機関に対し猶予期間が当初の3月末から9月末までに延長されたが、「レセコンや電子カルテなどの改修で多額の費用が発生する」「スタッフが少ない」などシステム導入が困難な医療機関も一定数存在しており、義務化をきっかけに小規模かつ高齢医師のクリニックを中心に閉院や廃院が進み、地域医療への影響が懸念されている。
電力やガスといった公共料金の値上げなど物価高騰による影響も大きい。保団連の調査では、7割以上の医療機関が電気料金について「値上がり幅1割以上」と回答。食材費や医療材料費も高騰しており、スタッフの賃上げができず人材確保に支障をきたしているという声も多い。
保険医協会・保団連は、オンライン資格確認の義務化による閉院・廃院を生まないため、義務化中止・除外規定の拡大を求め、また物価高騰に対する医療機関への財政措置を自治体に要請するなど、保険医の権利と経営をを守る活動を行っている。
医師にとっては、医療DXの推進や働き方改革などの影響もあり、環境が刻々と変化する時代を迎える。医師は勤務医であっても有期雇用がメインで、個人事業主の性格が強く、医師としてのキャリアアップを実現するためには、早いうちからリスクを想定したライフプランを形成することが重要になる。
特に開業医は、現役時代の収入は一般に比べ大きいものの、引退後の年金は公的年金のみとなるため、収入差が激しい特徴がある。収入があるうちに私的年金や運用商品を取り入れてしっかりと、老後の備えを用意しておく必要がある。
保団連は、保険医のための拠出型企業年金保険を運営。毎年6月までが申込期間となっている。加入者は5万1000人、積立金額は1兆3000億円に上り、50年以上の運用実績を持つ。予定利率(1.170%)を最低保証、ライフプランに合わせて積立や受取の自由度が高いことに加え、過去に積立金が削減されたことが一度もない安定的運営が特徴の年金制度だ。
前半期 :4~ 6月受付・9月1日加入発足
後半期 :9~10月受付・1月1日加入発足
https://hodanren.doc-net.or.jp/about/kyosai/
保団連は、医師には年金に加えて病気やケガなどへの備えが必要として、結成間もない1969年5月に独自の休業保障制度を設置。現在は全国保険医休業保障共済会が会員向けに充実した内容の休業保障制度を運営している。特徴は、非営利団体として運営しており、掛金が加入時から満期(75歳)まで上がらず一定で、加入しやすい点。第三者の医師が休業を必要と認めた期間であれば、入院や通院日だけでなく、自宅療養の期間中でも、最長730日の給付を受けることができる。
民間の損害保険会社が提供している一般的な所得補償保険は、契約期間が1年の自動更新型が大半を占め、保険契約者の年齢が上がるにつれ保険料が上昇していく。年齢上昇とともに疾病リスクと休業発生率は高まるため、年齢によっては保険料に3倍の差がつくこともある。同会の休業保障制度の掛金額は、加入時の年齢で決まり、加入期間中は変わらない点も魅力となっている。
受付:~5月25日
加入:8月1日