キノコ,フグ, シガテラ中毒は特定の食品中に含まれる毒性物質による食中毒である。シガテラ中毒(熱帯・亜熱帯の珊瑚礁域の毒化した一部の魚に含まれるシガトキシンによる)では致死的となることは少ないが,一部のキノコ中毒(特にアマトキシンを含むテングタケ類)やフグ中毒(テトロドトキシン)では致死的である。特異的解毒薬はないため,対症療法が治療の中心となる。
毒性物質が含まれる食品を摂取した事実が判明すれば容易に診断可能だが,多くの臨床症状が必ずしも特異的ではないため,その他の中毒や別の疾患も考慮に入れて問診を行う。ただし,対応が遅れると致死的となることもあるため,確定診断に固執することのないように注意する。
アマトキシン中毒では,腹痛,嘔吐,コレラ様の水溶性下痢などの消化器症状が摂食6~24時間後に生じ,24~48時間後に一時的回復,48~96時間後に肝腎機能障害~多臓器不全を発症する(消化器症状はその他の多くのキノコ中毒でも高頻度で生じる)。
フグ中毒では,めまい,顔面・四肢麻痺,反射消失などの神経症状(進行すると呼吸筋麻痺による呼吸不全)とともに,循環器症状として低血圧が摂食直後から発症する。
シガテラ中毒では,嘔吐,下痢などの消化器症状,口周囲の異常感覚,味覚異常,霧視,温度感覚異常などの多彩な神経症状,徐脈,ブロック,低血圧などの循環器症状を摂食の数時間後から発症する。
キノコ, フグ, シガテラ中毒のいずれも低血圧を生じうるため,注意を要する。
多くの身体所見は非特異的であるが,シガテラ中毒の神経症状である温度感覚異常(冷たいものを熱く感じたりする)は特徴的とされる。
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