顔面神経の被刺激性亢進により,その支配筋群の痙攣が発作性,反復性かつ不随意に起こる病態で,多くの場合,片側性である。顔面神経根出口領域で脳の血管による顔面神経の圧迫が原因となることが多い。
顔面表情筋の左右どちらかが痙攣する。痙攣部位は個人差があるが,上下のまぶた,口周囲,頰,顎,額,首の付近にも症状が出る場合がある。アブミ骨筋の痙攣により「コトコト」という音がする場合もある。痙攣の程度は変化することが多く,ストレス,緊張,疲れ,睡眠不足,寒冷,喫煙などで症状が増悪する。痛みは感じることはない。症状が1カ月以上続く場合に,片側顔面痙攣と診断される。診察時に症状が目立たない場合には,症状を増強させる方法として,目をぎゅっと閉じる,口角を強く引き上げて「イー」と言う,口をとがらせて「ウー」と言うなどをしてもらい,その直後での症状を確認するとよい。
脳MRI・MRA検査にて,顔面神経根出口領域で後下小脳動脈,椎骨動脈,前下小脳動脈などの血管と接して圧迫されていないかどうかを調べる。また,小脳橋角部での脳腫瘍の有無も鑑別することが必要である。
片側顔面痙攣の治療については,診断を確定した上で,患者の訴え,症状の程度や発症の期間をふまえて,治療選択できるように治療方法を提示し,患者の意思を尊重し決定していくことが最も大切である。
鑑別診断としては,疲れによる顔面ミオキミアがある。これは数週以内で症状が消失する。両側の顔面が痙攣する場合,ジストニアであることが多い。眼瞼痙攣やメージュ症候群,チックなどを鑑別する。顔面神経麻痺後の病的共同運動の場合には,顔面痙攣に準じた治療を行う。
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