日本内科学会の記念講演会「内科学会の将来展望」のセッションをウェブ視聴した。近年、日本からの論文数が低迷している。そして、大学の内科系教授に対するアンケート調査では、自分たちの診療と研究のバランスが診療に偏っていると考えているという。このことは、新型コロナウイルス感染症に対する論文数において、わが国が欧米先進国や中国、インドなどよりもかなり下位にあり、トップジャーナルに限っても同じである、という昨年11月の朝日新聞の記事とも一致する。
わが国の世界における地位が後退しているのは科学論文だけでなく、国全体がそうであるといってもよい。私が30代の1980年頃、いわゆるバブル以前には“Japan as No.1”とも言われた時代があった。しかし、わが国の経済指標は、この30年間ずっと成長が止まっている。デジタル化、IT革命にも完全に後れをとった。私たちは、この間、“ゆでガエル”状態であったことに、この頃になってやっと気がついた。
医学研究の停滞に関しては、大学病院が経営を重視せざるをえなくなり、研究よりも診療を優先したことが原因の1つではないかと考えられている。大学経営の構造変革は、社会経済に関する国家の基本方針に基づくものであるから、簡単に変えることは難しい。アカデミアは、与えられた社会経済環境の中で、診療と研究のバランスを保持しながら、最大のパフォーマンスを発揮できるように、自己変革することが求められる。その1つとして、研究に従事する医師のキャリアパスを制度設計し直す必要はないだろうか? その際、たとえば新しく発足した専門医制度の「臨床研究医コース」を臨床系の医学部教授の資格要件とすることなども考えられる。
“科学立国”の構想のもと、日本が再び立ち上がることを期待したい。Make Nippon Great Again(MANGA)!
島田和幸(地方独立行政法人新小山市民病院理事長・病院長)[内科学会][サイエンス][臨床研究医コース]