日本人間ドック学会と健保連が先月発表した『新たな健診の基本検査の基準範囲』の案に対し、関連学会から反論が示されている。
『基準範囲』は、150万人の健診データから選んだ、薬物治療をしていないなどの“超健康人”の検査値から全健診機関に適用可能な基準範囲を設定した。血圧値は、収縮期血圧147mmHgまで、拡張期血圧94mmHgまでを「正常」としている。
これに対し日本高血圧学会は、高血圧の判定基準「140/90mmHg以上」を変更しないと発表。人間ドック学会の「正常」について、「心血管病発症の危険性が検討されていない。“正常と思われる人の検査の基準値”というのが正確な表現」とした。
LDLコレステロール値について『基準範囲』案は、正常の値を「男性178mg/dlまで、女性(30~44歳)152mg/dlまで、(45~64歳)183mg/dlまで、(65~80歳)190mg/dlまで」とした。一方、日本動脈硬化学会では、高LDLコレステロール血症の診断基準値を140mg/dlと設定している。
●LDL-C男女逆転は「重大な齟齬」
日本動脈硬化学会は診断基準について「絶対リスクの概念を導入し、同じLDLコレステロール値でも、年齢や性別、危険因子の状態で冠動脈疾患のリスクは異なる考え方」と説明。「同じLDLコレステロール値の同年代の男女では、他に危険因子がない場合は男性のほうが冠動脈疾患発症の絶対リスクは高くなる」と指摘し、「人間ドック学会の基準値が男女逆転しているのは、動脈硬化性疾患予防の観点からは重大な齟齬が生じる」と批判。このほか、トリグリセライドの基準値についても問題視した。
【記者の眼】人間ドック学会は5月に『基準範囲』の最終報告書を取りまとめる予定だ。関連学会の指摘を踏まえ、健診の基準をどのように設定するかその内容が注目される。(N)