咳・痰が生じる病態を鑑別し,病態特異的な治療を行う。
咳嗽は持続期間により,①急性咳嗽(3週間未満),②遷延性咳嗽(3~8週間),③慢性咳嗽(8週間以上),に分類される。急性では気道感染症が多く,遷延性・慢性では咳喘息やアトピー型喘息,感染後咳嗽などで,感染症そのものが原因になることは稀である。
また,喀痰を伴わないか少量の粘液性喀痰のみを伴う乾性咳嗽と,喀痰を伴う湿性咳嗽に分類される。喀痰の性状(粘液性,膿性,血痰),症状の増悪寛解因子,好発時間帯,併存症状(発熱,胸痛,浮腫,体重増減),シックコンタクト,既往/内服歴,喫煙歴,職歴,渡航歴,住環境は診断の一助となる。45歳以上の喫煙者で新規症状がある場合や,55歳以上で30 pack-yearsの喫煙歴がある場合は精査を要する。
診察前に適切な感染防護具を検討する。患者と接触を伴う場合は標準予防策を講じ,COVID-19や結核などの空気感染する疾患を否定しえない場合は標準予防策に加え,N95マスクとアイプロテクションを装着する。空気感染を疑わない場合でも,飛沫の飛散が考えられる場合にはアイプロテクションを装着する。
SpO2低下,意識障害,血圧低下がある場合は緊急処置を要する。qSOFA>2点で敗血症を疑う。全身紅斑,蕁麻疹などの皮膚所見でアナフィラキシーの関与を疑う。
吸気時喘鳴(stridor)や発声困難,嗄声は気道狭窄の可能性があり,緊急性が高い。呼吸音で断続性ラ音(coarse crackle, fine crackle)は肺炎や気管支炎,連続性ラ音(wheezes,rhonchi)は喘息やCOPD,心不全を疑う。頸静脈怒張や過剰心音(Ⅲ音・Ⅳ音),四肢浮腫は心不全の可能性を高める。犬吠様咳嗽(声門下喉頭炎)や吸気性笛声(百日咳)は疾患特徴的である。
呼吸不全,循環不全,意識障害を認める場合は気道確保,酸素投与,点滴ルート確保を行い,高次搬送を検討する。気管挿管も考慮し,呼吸循環管理を行う。病歴や身体所見,血液ガス検査,胸部X線検査,12誘導心電図検査などで初期評価する。鑑別診断として肺炎,心不全,喘息発作,COPD急性増悪,肺塞栓症,気道異物,扁桃周囲膿瘍や急性喉頭蓋炎などの上気道疾患,アナフィラキシーショックなどを考える。
一手目 :ニトログリセリン注(ニトログリセリン)1回0.05~0.20μg/kg/分で開始(点滴静注)
血圧に応じ増減する。
二手目 :〈一手目に追加〉フロセミド注(フロセミド)1回10~20mg(静注)
一手目 :メプチンⓇ0.01%吸入液(プロカテロール塩酸塩水和物)1回0.3~0.5mL+生理食塩水2mL(吸入)
症状に応じ20〜30分間隔で反復する。
一手目 :ボスミンⓇ注(アドレナリン)1回0.3~0.5mL(大腿外側に筋注)
症状に応じ5〜20分間隔で反復する。
残り1,812文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する