左脚ブロックとは,心臓の電気活動が効率よく心房から心室に伝わるための組織(刺激伝導系)の一部である左脚の伝導が途絶した状態である。心電図上のQRS幅が延長し,特徴的な形態となることから診断される。基礎心疾患の有無によって重症度が異なる。
左脚ブロックの診断は12誘導心電図によってなされる。①QRS幅≧120ms,②V1およびV2誘導でのrSもしくはQSパターン,③V5およびV6誘導でのq波の消失,④V5およびV6誘導での心室興奮時間の遅延およびR波のスラーもしくはノッチの存在,が完全左脚ブロックの特徴である。
左脚ブロック患者では基礎心疾患の検索が重要となる。新たな左脚ブロックの出現を認めた際には,問診で胸痛や息切れの有無,また,めまいや失神の既往について確認しなければならない。特に胸痛を伴う新たな左脚ブロックでは虚血発作の可能性があり,急性冠症候群の鑑別が必要である。状況によっては,緊急の冠動脈造影が必要となる場合があるため,心エコーや採血を含めた評価を慎重に行い判断する。一方,息切れなどの出現を伴う場合には,拡張型心筋症や高血圧性心疾患,さらに筋緊張性ジストロフィーなどの二次性心筋症などの基礎心疾患の有無を確認することが重要となる。心エコーや採血に加えて,近年では心臓MRIなどでの詳細な評価も行われた上で,診断される。非侵襲的な検査にて心筋症が疑われる場合には,心筋生検を含めた心臓カテーテル検査での確定診断が行われる。また,症例によっては,めまいや失神を伴っていることがあり,24時間ホルター心電図を含む長時間心電図などで,一過性の房室ブロックへの進行がないかを確認する。特にⅠ度房室ブロックや右軸偏位を合併している際には,潜在的な房室ブロックへの移行をきたしやすいため,注意深くフォローアップを行う。無症候性の左脚ブロック患者においても,心機能や基礎心疾患の確認および経過観察は必要であり,心エコーなどによる定期的な心機能の評価を行う。
基礎心疾患があり,心機能が低下している症例では,左脚ブロックの存在によって心房-左心室および右室-左心室ならびに左心室内の非同期を生じることがあり,心機能をさらに悪化させることがある。また,左脚ブロックがある患者では,心不全治療薬での心機能改善の割合が低いことも報告されており,心不全症状を有し,左室駆出率(LVEF)が著しく低下した患者では,心臓再同期療法(CRT)が行われる。
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