Pre-CC OSCEは,診療参加型臨床実習で必要な基本的スキルに対する総括的評価である。Pre-CC OSCEは模擬患者やシミュレーターなどのシミュレーション環境を活用することで,評価の客観性維持を行う。Pre-CC OSCEには,診療参加型臨床実習の指針である門田レポートの必須項目も多く含まれており,「Student Doctor」の必要条件であることが裏づけられる7)。
Student Doctorの公的化に伴い,入り口であるPre-CC OSCEとCBTが公的化される(図1)8)。Pre-CC OSCEは近年度中に課題数が10に増加するとともに,医療的禁忌や患者の尊厳を損なう「危険行為」に対する厳しい評価が導入される。さらに,模擬患者,評価者のCATOによる「認定」も進んでおり,さらなる客観性担保が求められる。
Pre-CC OSCE前には,診療参加型臨床実習へ向けた基本的コンピテンシー獲得のため,様々な臨床技能実習が行われる。医学生はこのPre-CC OSCEという総括的評価に対して目標レベル到達のための実質的かつ確実な訓練を行うことになる。
現行の医師国家試験は知識を評価する試験が中心であり,技能・態度面の評価を十分に行うことはできない。医師国家試験にシミュレーションを用いたスキル評価導入も検討されてきたが,客観性担保の観点から現時点では断念されている。この全国的課題に対応するため,2020年から「医学部卒業時に,臨床研修開始可能な能力を修得しているか」を評価するため,Post-CC OSCEが導入された9)。Post-CC OSCEは,CATO提供の「機構課題」と,各大学の「独自課題」で実施される10)。すなわち,Student Doctor認証要件としてのPre-CC OSCE,卒業要件のひとつとしてPost-CC OSCEが活用される(図1)8)。Post-CC OSCEも医療面接・身体診察模擬患者やシミュレーターを用いるシミュレーションを活用した総括的評価である。
Pre-CC OSCEが,基本的な臨床関連手技を5分間もしくは10分間で客観評価するのに比して,Post-CC OSCEは16分の間に「医療面接」「身体診察」「臨床推論」を実臨床と同様に行い,診療参加型臨床実習の総括的評価のひとつとなる。
正常所見をシミュレーションするPre-CC OSCEは基本的な診察手技や問診能力の評価を行うが,対照的にPost-CC OSCEは様々な異常所見を得ながら鑑別診断を行っていく(図2)。このことは診療参加型臨床実習における問診・診察・臨床判断が必要不可欠であることを裏づけている11)。また,CATOは「診療参加型臨床実習に必要とされる技能と態度についての学修・評価項目」を作成し12),診療参加型臨床実習とPre-CC OSCE,Post-CC OSCEの連動性担保をめざしている。
小括すると,厚生労働省,文部科学省,CATOの3者が協調し,Student Doctorおよびその認定評価試験の公的化をめざしていると言える。