診療参加型臨床実習に関する現状把握と検討のため,日本医学会会長である門田守人氏を中心として診療参加型臨床実習に関する全国調査が行われ,「門田レポート」が報告された13)。門田レポートは,医療安全の観点から,医学生による医行為の医師法上の解釈を行い,Student Doctorの公的化に対する大きな推進力になった。
門田レポートは診療参加型臨床実習の中で,
①何が医師法上の医行為に該当しうるか
②どういった条件下であれば医師法上の違法性阻却がなされるか
③医師養成の観点からどのような医行為が推奨されるか
を整理した。
そして,侵襲性,難易度,羞恥性等の観点から,医学生が経験すべき医行為を「必須項目」と「推奨項目」に分類した。門田レポートは,カルテ記載,カンファレンス参加および発表などの臨床推論が「必須項目」として医行為の基盤であることを示唆しており,そのことには注目すべきである。侵襲的処置や羞恥性の高い処置の多くは「推奨項目」に分類されている。これら推奨項目の修得のために,シミュレーション教育法が有効である。すなわち,診療参加型臨床実習前の準備教育としての臨床技能実習だけでなく,推奨項目の代替手段としてもシミュレーション教育法が活用できる(図2)。
診療参加型臨床実習に関連したシミュレーションは,獲得目的スキルがテクニカルスキルとノンテクニカルスキルに及ぶため,学修目標に応じた手法を選択する必要がある(表2)。
門田レポートの留意点のひとつとして,「患者安全」および「医療安全」が含まれている。Student Doctorが臨床現場に入り,医行為を行う限りは医療安全だけでなく,感染対策や情報管理に関する準備教育を行う必要がある。しかし,これらの3要素をミラーの学修ピラミッドで考えると,到達に10年必要とされる「Is:あるがまま」の状態や,単独でできる「Does」のレベルを実習前に設定するのは難しい14)。Pre-CC OSCEではシミュレーションを活用して「Show How」を求めていることから,Show HowからDoesのコンピテンシー獲得をめざすのが順当であろう(図3)8)。これらの医療の質確保のため,アンプロフェッショナルな行動に対する指導やStudent Doctorに関連した医療安全面のコンセンサス作成が必要である8)。先述の2022(令和4)年度版医学教育モデル・コア・カリキュラムでもIT活用だけでなく,情報管理に関するコンピテンシーが強調されている。
ここで重要なことは,これらの医療安全,感染対策,情報管理教育に関するコンピテンシー育成(アウトカム基盤型教育)は,診療参加型臨床実習から開始するのではなく,総合教育,基礎医学教育,社会医学教育を施行する低学年の時点から系統的に導入することが望ましい。特に医療安全面では多職種協働が必要不可欠であるため,医療安全の多職種連携に関する科目群の役割は大きい15)。