日本医師会の松本吉郎会長は9月20日の定例会見で、食材料費や物価高騰などにより医療機関の経営が厳しさを増していると強調、政府が近く取りまとめる秋の経済対策に支援を盛り込むよう病院団体、介護団体とともに要望書を提出する考えを示した。
岸田首相は内閣を改造した13日の会見で、10月をめどに物価高騰に対応する経済対策を取りまとめ、補正予算案を編成する考えを表明。自民党内からは15~20兆円規模とするよう求める声も上がっている。
会見の中で松本会長は、水道光熱費、食材料費の高騰が医療機関のコスト負担に拍車をかけていると強調。「特に入院時食事療養費は30年間据え置かれており、医療機関の努力のみでは食事療養の提供が極めて困難な状況になっている。患者、利用者の負担に配慮しつつ緊急の経済対策として支援を要望していきたい」と述べた。さらに医療DXへの対応なども必要と指摘しながら、他団体と連名で近日中に厚生労働相宛に要望を行うとした。
この経済対策とは別に、2024年度診療報酬改定でも対応を求めていく考えを示した。厚生労働省が9月1日に発表した「令和4年度医療費の動向」を受けて日医の考え方を表明したもの。
「医療費の動向」によると、令和4年度(22年度)の概算医療費は46.0兆円で、前年度に比べて1.8兆円、4.0%の増加となった。新型コロナの流行をはさんだ近年の伸び率をみると、19年度は2.4%増、20年度は3.1%減、21年度は4.6%増。20年度は大きく落ち込んだものの、21年度以降は4%台の伸びを示している。この結果は9月13日の中央社会保険医療協議会でも報告され、24年度改定に向けた議論が始まった。
会見の中で松本会長は、「4%という伸び率は、コロナ前と比べると高くみえるが、19年度からの伸び率を1年当たりに換算すると1.8%であり、『それほど高いというわけではない』と厚労省から説明を受けている。また今回の伸び率は、20年度の受診控えからの反動、コロナそのものの治療、20年度診療報酬改定で不妊治療の保険適用化が主な要因―と説明されている」と伸び率の内容を解説。
その上で、24年度改定について「財務省や支払側は医療費削減、マイナス改定を強く主張してくると見込まれ、非常に厳しい議論になると考えている」と予測しつつ、「(医療機関では)感染対策経費の増加、追加的人員の確保など投じたコストも上昇しており、経営が好調に転じたわけではない」と強調、「緊急要望とは別に、こうした視点で改定を要望していく」と述べた。ただ、改定率については「あえてここでは述べない」と現時点での表明を避けた。