以前は先天性股関節脱臼と呼ばれていたが,周産期に緩みのある乳児の股関節が,下肢を伸ばした位置でおむつをするなどの間違った育児習慣によって外れていくことが多いと言われている。
股関節が外れていても乳児は疼痛を訴えることはなく,外見上は気づきにくい。よって,乳児の診察は①股関節開排制限,②大腿または鼠径皮膚溝(しわ)の非対称,を注意深く観察する。加えて,③家族歴(血縁者の股関節疾患),④女児,⑤骨盤位分娩(帝王切開時の肢位を含む),のリスクファクターも大切である。①あり,②~⑤のうち2つ以上あり,または「健診医の判断,保護者の精査希望あり」の症例は二次検診への紹介,精査が必要である1)。寝返りを獲得する生後6カ月未満での診断が,その後の治療の観点でも重要である。
エコーや単純X線を用いた画像診断。
診断時の月齢にもよるが,原則リーメンビューゲル(Rb)を用いた装具療法を選択する。しかし,開排制限が強い場合や単純X線での脱臼の程度が強い(高位脱臼)場合は,牽引治療を第一選択とすることもある。従来,Rbの装着開始月齢は生後3~4カ月頃が推奨されていたが,近年は,症例によっては早期の装着についても議論され,筆者らも軽度脱臼症例については早期に装着している。
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