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尖圭コンジローマ[私の治療]

No.5194 (2023年11月11日発行) P.43

安田 満 (札幌医科大学医学部感染制御・臨床検査医学講座病院教授)

登録日: 2023-11-13

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  • 尖圭コンジローマは,ヒトパピローマウイルス(human papillomavirus:HPV)による良性乳頭腫である。主に発がんの低リスク型であるHPV 6型あるいはHPV 11型の感染によって発症する。ほかにHPV 42型,43型,44型の低リスク型が分離されることもある。
    性行為によりHPVに感染した部位との接触により感染する。接触した粘膜や皮膚の微小な傷よりHPVが侵入し,基底細胞等に感染する。感染後3週間~8カ月間,平均2.8カ月で視診可能な程度まで増殖する。
    接触した部位に感染するため,感染部位は多様である。男性では陰茎の亀頭,冠状溝,包皮内外板,陰囊,女性では大小陰唇,会陰,腟前庭,腟,子宮頸部,また,男女を問わず肛門周囲や直腸内,外尿道口,尿道内や膀胱などにも発生する。病変は乳頭状,または鶏冠状の疣贅(腫瘤)を呈する。
    自覚症状として腫瘤形成以外にはほとんどないが,疼痛,瘙痒,出血を認めることがある。肛門等の性器以外の病変に接触することにより感染する場合があるため,コンドームでは予防できない場合がある。
    再発を繰り返すことが多く,セックスパートナーの追跡が必要である。また,免疫不全患者では,難治性である。

    ▶診断のポイント

    基本的には視診により臨床診断を行う。感染症法での届出のために必要な臨床症状として「性器及びその周辺に淡紅色又は褐色調の乳頭状,又は鶏冠状の特徴的病変を認めるもの」を挙げており,これらの特徴的病変を認めれば尖圭コンジローマと診断してよい。病巣範囲が不明瞭な場合は,腟内や子宮頸部では3%酢酸溶液,外陰部では5%酢酸溶液で処理すると病変部位が白変化して確認できる。

    他疾患との鑑別が必要な場合(治療に反応しない場合や色素沈着,硬結や潰瘍を伴うときなど)は確定診断を行う。確定診断には,病理組織学的診断と病原診断法がある。一般的には,疣贅の生検にて病理組織学的診断を行う。本疾患に特徴的な所見としては,表皮の錯角化,表皮肥厚,乳頭腫症,表皮突起部位の顆粒層に不規則な濃縮した核,有棘層中間から上層にかけての細胞質が空胞化した空胞細胞(koilocyte),表皮突起の著明な肥大,核異型性を認めない,真皮乳頭層の血管の増生および拡張などがある。ただし,腟前庭部乳頭腫と尖圭コンジローマの病理学的鑑別は難しい。病原診断法はHPVの検出を行うが,HPVは分離培養が困難であるため,病巣からのHPVのDNAを検出する。検出法としてPCR(polymerase chain reaction)法,real-time PCR法,hybrid capture Ⅱ法やLAMP(loop-mediated isothermal amplification)法などがあるが,尖圭コンジローマの診断目的での保険適用はない。

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