アルドステロン「合成」阻害剤は2型糖尿病合併の有無を問わず、またSGLT2阻害薬(SGLT2-i)服用の有無を問わず、慢性腎臓病(CKD)例のアルブミン尿を改善することが、ランダム化比較試験の結果、明らかになった。ただし腎機能改善作用は明らかでない。米国・ワシントン大学のKatherine R Tuttle氏らが12月15日、Lancet誌で報告した。
アルドステロン作用抑制による腎保護作用はすでに、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)を用いた大規模RCT"FIDELIO-DKD"で報告されている。2型糖尿病合併CKD例において「推算糸球体濾過率(eGFR)低下抑制」を含む腎転帰を改善した。そのため受容体レベルでの作用拮抗ではなく、アルドステロン合成そのものを抑制すればさらに、強力な腎保護作用が得られるのではないかと考えられた。
本試験の対象は、忍容最大用量のレニン・アンジオテンシン系阻害薬服用下でeGFR「30-<90mL/分/1.73m2」かつ、尿中アルブミン・クレアチニン比(UACR)「200-5000mg/g」だったCKD 714例である。2型糖尿病の有無は問わないが1型糖尿病は除外されている。同様に「血清K≧4.8mEq/L」例も除外された。また他疾患でMRAの適応がある例とSGLT2-i服用(予定)例も除外されている。
これら714例はまず、SGLT2-i群とプラセボ群にランダム化後8週間、二重盲検法で追跡された(導入期間)。そして導入期間を完遂した586例がSGLT2-i・プラセボを継続しながら、さらにアルドステロン合成阻害剤(ASi:BI 690517)群とプラセボ群にランダム化され、同様に二重盲検法で14週間追跡された。なおASiは低・中・高の3用量が用いられた。比較は、SGLT2-i併用「ASi群 vs. プラセボ群」間、SGLT2-i非併用「ASi群 vs. プラセボ群」間で実施された。
・UACR
1次評価項目である「ランダム化後14週間のUACR」は、SGLT2阻害薬併用の有無を問わずASi群でプラセボ群に比べ有意に低値となっていた。ASi群における低下幅は、SGLT2-i「非併用」で「20~35%」、「併用」でも「9~33%」である(ASi用量により差)。
・eGFR
一方「ランダム化後14週間のeGFR」は、ASi群でプラセボ群に比べ低下(傾向)を認めた。具体的には、中・高用量のASi単剤(SGLT2-i非併用)群ではプラセボに比べ、3.0~3.6mL/分/1.73m2の有意低値だった。同様にSGLT2-i併用群でも、ASi高用量群ではプラセボ(SGLT2-i併用)群に比べ、3.7mL/分/1.73m2、有意に低くなっていた。またSGLT2-i併用の有無を問わずASi群では、当初のeGFR低下後、少なくとも14週間という観察期間では再上昇する傾向を認めなかった(プラセボ群とほぼ並行して推移)。
Tuttle氏らは臨床転帰への影響を評価する第Ⅲ相試験が必要だと結んでいる。
本試験はBoehringer Ingelheimから資金提供を受けた。また同社は投稿原稿をレビューした。