筆者が2018年より開始した産婦人科領域における遠隔健康医療相談サービス1)から、活用事例シリーズの第12回(最終回)として、今回は「今後の展望」について書きます。
公衆衛生学の観点から、産婦人科領域における社会課題に対して、遠隔医療の普及や発展がどのようにアプローチできるのでしょうか。
日本では少子化が凄まじい勢いで進んでいくことは不可避です。医療過疎地域は増え、産婦人科医のいない市区町村が増加する中で、医療機関の集約化は避けられないでしょう。そこで、遠隔医療の活用により、地理的な障壁を越えて質の高いケアを提供する仕組みづくりが重要となります。そのためにも、オンラインでの診察や相談、健康管理のアドバイスを届けるための工夫や知見を蓄積することが重要であり、「リスクがあるから」といつまでも消極的な姿勢であってはならないと考えます。
医学的に誤った情報やデマがテレビ放送や書籍、インターネット上には溢れ返っています。これからの時代、オンラインプラットフォームやアプリを通じて、誰もが適切な産婦人科関連の情報をわかりやすく入手できることは健康維持や向上に直結するでしょう。こうしたことに、チャットボットや非同期型遠隔健康医療相談が貢献できる点は大きいと考えます。
産後うつは日本でも大きな課題であり、妊産婦死亡の原因のうち最多と考えられている「自死」にも強く関連しています。産後女性を対象とした遠隔医療サービスを普及し、産後1カ月以降も産後うつのスクリーニングやカウンセリング、育児支援などを行うことで、産後ケアの質の向上を図り、産後うつや自死、乳幼児虐待を予防できる早急な仕組みづくりが望まれます。
家庭や学校現場での包括的性教育が普及することは産婦人科領域の種々の課題解決に直結しますし、SRHR(sexual reproductive health and rights)の向上にも寄与します。オンライン教育プログラムや遠隔医療相談を活用すれば、避妊方法、性感染症予防、性暴力、月経管理、リプロダクティブヘルスに関する知識などを広めることができるのではないでしょうか。
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筆者のサービスは全国120以上の市区町村に導入されていますが、今後も社会インフラ化と産婦人科医療のさらなる発展をめざして参ります
【文献】
1)株式会社Kids Public:産婦人科オンライン. https://obstetrics.jp/
重見大介(株式会社Kids Public、産婦人科オンライン代表)[社会課題へのアプローチ]