今年の元旦に能登半島地震が起きた石川県能登地方では、今もなお避難生活を送ってらっしゃる方が多くおられます。心よりお見舞い申し上げます。
ニュースでは「被災地で産まれた新しい命」のように、被災地でのお産が何度となく取り上げられていました。病院も被災している中での無事のご出産はすばらしいことですし、暗いニュースばかりになりがちな中で希望を感じさせる話ではありますが、被災地の妊産婦さんはさぞかし不安と思います。
地震大国の日本ではまたいつどこで大きな地震が起きるかしれません。妊産婦さんに知っておいて頂きたいことと、被災地で妊産婦さんに接する可能性のある医療従事者や自治体のみなさまに知っておいて頂きたいことをまとめます。
・妊婦であることを伝える
妊娠後期でないと意外と外見からは妊婦さんとわかりません。避難所では妊娠中であることを遠慮なく伝えましょう。
・母子手帳は日頃から持ち歩く
いつ災害に遭うかはわかりません。日頃から母子手帳を携帯しておくことをおすすめします。
・できれば疎開する
被災地ではどうしても医療資源が限られます。もし被災地以外に疎開ができるのであれば疎開するに越したことはありません。
・陣痛を感じたらはやめに連絡
被災地では通常より移動に時間がかかることが予想されます。もしかして陣痛かも、と思った時点で一度病院へ連絡しましょう。
・こまめな水分補給とストレッチ
妊娠中は、血栓症のリスクが妊娠していない女性の約5倍(産後は約10倍)です。もし手に入るのであれば弾性ストッキングも有効です。
・1人にならない
避難所での女性や子どもの性被害は問題視されています。数人で行動するなど被害に遭わないようにしましょう。
・妊娠経過になにかあっても自分を責めないで
能登半島地震で被災された妊婦さんが「ストレスで切迫流産になっている」というVTRをニュースで見かけたのですが、(切迫)流産/早産は妊婦さんのせいではありません。避難生活でストレスを感じているのは事実と思いますが、切迫流産とに因果関係はありません。ストレスが原因で、などと言うと、妊婦さんは自分を責めることになってしまいます。災害時にかかわらず妊娠中はなにがあるかわかりませんが、妊婦さんのせいではありませんので、自分を責めないで下さい。
ただでさえ妊娠中は不安なもの。災害時に少しでも安心してお産を迎えられるよう、参考にして頂けましたら幸いです。
稲葉可奈子(公立学校共済組合関東中央病院産婦人科医長)[妊産婦の避難生活][留意点]