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【文献 pick up】Lp(a)高値例の冠動脈イベント抑制にアスピリンは有用なのか―JAHA誌

宇津貴史 (医学レポーター)

登録日: 2024-02-09

最終更新日: 2024-02-09

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心血管系(CV)疾患1次予防例では高リスクであっても出血リスク増加を上回るCVイベント抑制が認められないアスピリンだが[Zheng SL, et al. 2019]、リポ蛋白(a)Lp(a)]高値例では期待が持てるとの報告が現れた。米国・カリフォルニア大学のHarpreet S. Bhatia氏らが1月31日、大規模コホート解析の結果としてJournal of the American Heart Association誌で報告した。はたして額面通りに受け止められるのか。

Lp(a)CVリスクと認識されながら、高値例に対する有効な介入法は必ずしも明らかになっていなかった[Lampsas S, et al. 2023]。

【対象】

今回解析対象となったのは、米国在住でCV疾患既往のない2183例である。多人種前向きコホート"MESA"登録の6814例から、アスピリン「服用」例(1234例)と「非服用」例(949例)を傾向スコアで背景因子をマッチした上で抽出した。平均年齢はアスピリン「服用」例が有意に1歳高かったが(66.4vs. 65.3歳)、女性の割合や高血圧・糖尿病合併率、喫煙状況に有意差はなかった。Lp(a)濃度を含む血性脂質も同様で、差はなかった。ただし降圧薬服用率(53.7% vs. 45.6%)とスタチン服用率(26.3% vs. 16.3%)はいずれも、アスピリン「服用」例で有意に高かった(数字はいずれも傾向スコアマッチ後)。

【方法】

これら2183例を観察開始時Lp(a)濃度「≦50mg/dL」群(1760例)と「>50mg/dL」群(423例)に分け、それぞれでアスピリン「服用」例と「非服用」例の「冠動脈イベント」(冠動脈疾患死・心筋梗塞)と「大出血」の発生リスクを比較した。なおLp(a)濃度で分けたのちのアスピリン「服用」例、「非服用」例の背景因子は不明である。

【結果】

その結果、アスピリン「服用」例の15.7年間(中央値)の「冠動脈イベント」ハザード比(HR)は、Lp(a)濃度「>50mg/dL」群に限り、「非服用」例に比べ0.5495%信頼区間[CI]:0.31-0.93)と有意に低くなっていた。一方、Lp(a)濃度「≦50mg/dL」群では、HR0.8095%CI0.58-1.10)と減少傾向にとどまった。なお冠動脈イベント発生率そのものの数字は報告されていない(カプランマイヤー曲線から6000日時点の値を読み取ると、Lp(a)濃度「>50mg/dL」群ではアスピリン「服用」例で約13%、「非服用」例で20%強)。

また「大出血」については、傾向スコアマッチ後コホートにおける発生率が報告されていない。参考までに傾向スコアマッチ前コホートで出血データの揃っていた6361例を解析した結果では、Lp(a)濃度「>50mg/dL」群における大出血発生率はアスピリン「服用」例が20.3%、「非服用」例は14.4%だった(HR1.4995%CI1.09-2.04)。

【考察】

Bhatia氏らはこれらより、アスピリンがLp(a)高値例のCV疾患1次予防に有用ではないかと期待を寄せている。同氏はかねてより「アスピリンはLp(a)高値例に有用」との仮説を提唱している。

MESA研究は米国国立衛生研究所下部組織からの資金提供を受けた。

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