結核菌が肺に初感染した後,血行性に骨関節での二次病巣を形成したものが骨関節結核である。わが国において結核は減少傾向が続き低蔓延国となったが,近隣諸国では高蔓延状態が続いており,いまだに常に念頭に置くべき疾患である。患者の7割近くが65歳以上であるため,加齢に伴う疾患(圧迫骨折,変形性関節症など)との誤診が多く,見落としによる診断の遅れも多い。
典型的な感染徴候を伴わないことが多く,他疾患との鑑別は困難である。脊椎結核ではCTガイド下生検,関節結核では関節穿刺による結核菌の同定が必須である(抗酸菌塗抹・液体培養・遺伝子同定検査)。鑑別診断の際は肺結核の合併も念頭に置き,胸部画像所見,喀痰抗酸菌検査についても確認する。
治療の原則は,抗結核薬導入と手術による病巣の可及的縮小である。肺と比べると血行に乏しいので,肺結核の標準治療期間を3カ月間延長して9カ月間内服とする。重症肺結核合併,免疫低下を伴う合併症,病巣治癒遷延などでは,治療期間を延長する。詳しくは,日本結核・非結核性抗酸菌症学会のガイドライン1)を参照されたい。
感染症治療の基本原則であるが,菌が検出されるまで抗結核薬は投与しない。また,一般細菌による感染症を疑った場合のレボフロキサシン単剤投与,MRSA感染を疑った場合のリネゾリド投与は,結核が鑑別できていない場合は要注意である。レボフロキサシン,リネゾリドは結核菌にも有効であるが,活動性結核に単剤で投与すると必ず耐性化する。関節リウマチ治療において,スクリーニング検査で潜在性結核と診断された場合のイソニアジド予防投与においても,十分な注意が必要である。活動性結核を見落とすと,単剤投与されたイソニアジドに対して耐性化する2)。
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