「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」(日本腎臓学会編)にも記されているように、慢性腎臓病(CKD)「の発症および重症化には生活習慣(略)が深くかかわって」おり、「生活習慣のなかからCKDのリスクとなる因子を抽出し(略)、行動変容を起こすことはCKDの発症予防(略)に重要」と考えられている。そのような観点から興味深い論文が2月28日、JAMA Network Open誌に掲載された。砂糖あるいは人工甘味料入り飲料の習慣的摂取に伴い、CKD発症リスクが上昇するという観察研究である。韓国・延世大学のGa Young Heo氏らが英国データ解析の結果として報告した。
今回解析対象となったのは、英国在住で観察開始時の食生活調査が明らかだった腎疾患のない12万7830例である。自主参加コホート「UKバイオバンク」から抽出した。平均年齢は55.2歳、女性が51.8%を占めた。
観察開始時調査による甘味飲料摂取頻度と、その後のCKD発症リスクの関係を検討した。
・CKD発症率
10.5年間(中央値)観察中、3.5%がCKDと診断された。
・甘味飲料摂取頻度とCKD発症リスク
「砂糖含有飲料」を「1日に1杯/本以上摂取」群では「非摂取」群(67.6%)に比べ、CKD発症リスクが有意に高くなっていた。諸因子補正後ハザード比(HR)は1.19(95%信頼区間[CI]:1.05-1.34)だった。同様に「人工甘味料含有飲料」も、「1日に1杯/本以上摂取」群で「非摂取」群(79.4%)に比べ、CKD発症リスクは有意に高かった。加えてリスク上昇幅は「砂糖含有飲料」よりも大きい傾向を認め、補正後HRは1.26(95%CI:1.12-1.43)だった。一方、「天然果汁ジュース」では摂取量の高低とCKD発症リスクは相関していなかった。これらの結果はいずれも、感度分析の結果でも同様だった。
Heo氏らはこの結果を、近時の観察研究9報メタ解析[Lo WC, et al. 2021]と一致するとし、CKD予防には「砂糖含有飲料」だけでなく「人工甘味料含有飲料」も避けるべきだと考察している。またそれら飲料に代替して「天然果汁ジュース」を摂取する場合も、摂取過剰はさまざまな代謝異常のリスクを上げ得る点に注意を促している。
本研究には開示すべき利益相反はないとのことである。