変形性膝関節症は,膝関節内構造物(関節軟骨・半月板・軟骨下骨・滑膜・靱帯等)が変性や損傷することにより機能不全を起こし,歩行など移動時に膝痛が生じ,移動機能低下をまねく運動器疾患である。50歳以上で発症頻度が高まり,80歳以上の女性では8割以上に認められる有病率のきわめて高い疾患である。
問診と視診も重要である。問診には,患者立脚型機能評価尺度を用いると,より正確に評価できる。膝痛増悪の機転となるエピソードの有無,歩行速度の低下の有無,階段使用時,特に降段時の膝痛の有無の確認を行う。視診では,歩容や下肢アライメントの確認を行う。次に,関節水腫や腫脹の有無,膝関節可動域,圧痛部位の確認を行う。画像診断は,単純X線を立位にて撮影すること,ならびに関節裂隙を正確に評価できるように撮影すること,の2点が重要である。また,立位膝単純X線では早期や初期に見えても,膝痛の軽減が不十分であったり夜間痛が持続したりする場合には,可能であればMRIによる精査も検討に値する。
保存療法が原則である。保存療法は,非薬物療法と薬物療法を併用する。
非薬物療法では,まず下肢筋力訓練のホームエクササイズを指導する。具体的には,①下肢伸展訓練,②下肢外転訓練,③下肢内転訓練を組み合わせたプログラムを作成し,パンフレットにして渡し,診察台で実践させている。内反膝では足底板(外側楔状型)を作成する。膝関節に腫脹を認める場合には,アイシングも勧めている。
変形性膝関節症の疼痛は,内側型変形性膝関節症であれば膝関節内側が,外側型であれば膝関節外側が,最も炎症の強い部分である。したがって,罹患膝関節に絞り,消炎鎮痛薬による治療から開始する。併存疾患がない場合は,アセトアミノフェン,NSAIDs外用薬,非選択的NSAIDs内服薬,COX-2選択的阻害薬,ヒアルロン酸関節内注射が推奨されている。消化管障害リスクや心血管障害リスクがある場合は,アセトアミノフェン,NSAIDs外用薬,ヒアルロン酸関節内注射が推奨されている。腎障害リスクがある場合は,アセトアミノフェンとヒアルロン酸関節内注射が推奨されている。
しかし,変形性膝関節症は,消炎鎮痛薬では改善困難な強い痛みを生じることがあること,そして疼痛閾値低下および中枢感作が起きうることが近年明らかになっている。この場合は,罹患膝のみの局所の治療では不十分となるため,疼痛感知および伝達機構に作用する薬剤の使用も選択肢となる。
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