尿路感染症(urinary tract infection:UTI)は,感染部位により3つにわけられる。
①上部UTI:腎盂腎炎,急性巣状細菌性腎炎(acute focal bacterial nephritis:AFBN),腎膿瘍。腎実質の感染症で発熱を伴う。
②下部UTI:膀胱炎,尿道炎など。無熱性UTIとも呼ばれる。
③無症候性細菌尿
UTIは早期乳児の細菌感染症の原因として最も多く,乳児期は男児に,幼児期以降では女児に多い。膀胱尿管逆流(vesicoureteral reflux:VUR)などの先天性腎尿路奇形(congenital anomalies of the kidney and urinary tract:CAKUT)や機能性排尿排便障害がリスクとなる。起炎菌は大腸菌が8〜9割を占め1),そのほか腸内細菌での発症が多い。CAKUT 以外では複数菌が起炎菌となることは少ない。上部UTI後の腎瘢痕は腎機能低下の原因となる。
排尿確立前の乳幼児では導尿で5×104 CFU/mL以上2),年長児で1×105 CFU/mL以上の菌検出を陽性とするが,実際には103〜104 CFU/mLのUTIも多い。膿尿はなくともUTIは否定できない。試験紙法での尿中白血球検査はやや特異度が低い。尿中亜硝酸塩反応は,感度は低いが特異度は高い1)。
年長児の上部UTIでは発熱のほか腰部の叩打痛が,下部UTIでは排尿時痛,頻尿,尿意切迫感などがみられる。乳幼児の上部UTIでは発熱のみを呈することが多く,不明熱症例はUTIの可能性を念頭に置く。
UTI症例では,膿瘍やCAKUTの確認のために腎尿路の超音波検査を行い,AFBNを疑う例では造影CTを撮像する。上部UTIと下部UTIの鑑別は問題となるが,CRPでの判断精度は高くなく,有熱例での鑑別は困難である。典型的な下部UTIは2歳以上に多く1),2歳以下では重症化のリスクに鑑み,上部UTIの可能性を考え治療を開始する。
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