心房細動(AF)例では40%前後が抑うつを合併している [Graham T, et al. 2007、Sang CH, et al. 2013] 。しかし経口抗凝固薬(OAC)を服用している場合、安易に選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を処方すると、大出血リスクが著増する可能性もあるようだ。カナダ・マギル大学のAlvi A. Rahman氏らが症例・対照研究の結果として3月22日、JAMA Network Open誌で報告した。
解析対象となったのは、英国在住でAF診断後にOACを開始した33万1305例である。かかりつけ医データベース(UKCPRD)から抽出した。なおOAC開始前からSSRIを服用していた例、甲状腺機能亢進例は除外されている。平均年齢は73.7歳、男性が57.1%を占めた。
上記33万1305例から、平均4.6年間の観察期間中に「大出血」(大出血による入院・出血死)を来した4万2190例と「大出血」非発症115万6641例(対照群)を比較し、OAC服用中のSSRI開始が大出血リスクに及ぼす影響を検討した。なお対照例は、大出血例と「年齢」「性別」「データベース登録日」さらに「観察期間」をマッチさせている。
その結果、大出血発生比(IRR)は、OAC・SSRI併用でOAC単独に比べ有意に高値となっていた(1.33、95%信頼区間[CI]:1.24-1.42)。このリスク上昇は併用開始後30日間で、特に著明だった(IRR:1.74、95% CI: 1.37-2.22)。
またSSRI併用に伴う大出血リスク上昇は、DOAC、ビタミンK拮抗薬(VKA)のいずれでも認められた(DOACとVKA間に有意差なし)。さらにこのリスク上昇は「年齢の高低」「性別」「大出血履歴の有無」「慢性腎臓病合併の有無」にも左右されず、またSSRIの強弱も問わず一貫していた。
Rahman氏らは、観察研究8報メタ解析 [Rahman AA. et al. 2022] からも同様の結果が得られているとしながらも(併用に伴う大出血ハザード比:1.35)、OACとSSRI併用を控えるべきとは考えておらず、出血リスクを軽減する手立ての必要性を訴えている。
本研究は資金提供を受けていないとのことだ。