脳梗塞は,脳の動脈の閉塞や狭窄により脳組織が虚血に陥り,脳の機能障害を生じる病態である。
三大病型は,①脳の穿通枝閉塞で発症するラクナ梗塞,②脳や頸部の主幹動脈の粥状硬化により発症するアテローム血栓性脳梗塞,③心臓内にできた血栓が脳動脈を閉塞させることで発症する心原性脳塞栓症,である。
脳梗塞は基本的に急性に発症する。不可逆的な脳梗塞に陥った領域(虚血コア)とその周辺に存在する可逆的虚血領域(ペナンブラ)の脳機能に起因した神経脱落症状を呈する。具体的には片麻痺,半身の感覚障害,失調,視野障害などである。
頭部MRIや頭部CTで虚血コアとペナンブラの広がりを検討し,神経症状と画像所見のミスマッチの有無を見きわめることが重要である。ミスマッチが大きいほど再灌流療法の適応が拡大する。
MRAやCT血管造影などで,脳主幹動脈の閉塞の有無を調べることも重要である。脳主幹動脈の近位部に閉塞がある場合には,血栓回収療法を検討する。
救急の現場で実施しうる脳梗塞治療は,①再灌流療法,②急性期抗血栓療法,③その他の治療,に大別される。再灌流療法には,血栓溶解療法と機械的血栓回収療法がある。発症から治療開始までの時間,虚血コアの大きさ,症状の程度などによって再灌流療法の適応は決まる。急性期抗血栓療法は,抗血小板療法と抗凝固療法に大別され,病型に応じて使いわける。
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