SUMMARY
プライマリ・ケアを取り巻く政策の形成過程が2040年でも同じならば,その頃のプライマリ・ケアの必要性はいっそう高まっているにもかかわらず,政策はこれまでと変わらないであろう。
KEYWORD
政策形成過程
政策は,所詮,力がつくるのであって正しさがつくるのではない。関係者たちの力関係が映された政策形成過程が同じなら,時代が変わり必要や正しさが変わろうが,以前と同じ政策がつくられる。政治経済学はそのように考える1)。
PROFILE
専門は社会保障論,医療政策を中心とした再分配政策の政治経済学。慶應義塾大学商学部卒業,同大学院商学研究科修士・博士課程修了後,2002年4月より現職〔博士(商学)〕。社会保障国民会議,社会保障制度改革国民会議委員,全世代型社会保障構築会議委員,社会保障の教育推進に関する検討会の座長等を歴任。
POLICY・座右の銘
勿凝学問
「経済学者の立場」からの欄であるが,「政治経済学者の立場」から筆を進めようと思う。
全世代型社会保障構築会議というものが,2021年11月〜2022年12月に報告書をまとめている。この会議では「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」が議論されていた。委員の1人であった筆者は,議論のたたき台を依頼され,第8回会議(2022年11月11日)に資料「国民の医療介護ニーズに適合した提供体制改革への道筋─医療は競争よりも協調を V2」を提出している2)。
この資料で提案していたのは,「かかりつけ医機能合意制度」の創設である。かかりつけ医機能合意制度とは,次の条件を満たす医療機関と,それを求める患者の双方が手を挙げて合意することによって新しい制度をつくるというものであった(表1)2)。
手挙げ方式は,手を挙げない人には,(一見)関係のない話のように見える。しかし,そうではない。こうした案は,手を挙げない人たちが反対することはわかっていた。なぜ,そうなのか。そうしたことも考えるのが,いわゆる「政治経済学」というものでもある。