伝染性膿痂疹は,表皮を感染の主体とする表在性細菌感染症である。水疱性膿痂疹と痂皮性膿痂疹にわけられる。水疱性膿痂疹は黄色ブドウ球菌,痂皮性膿痂疹は主にレンサ球菌により生じる。
水疱性膿痂疹は夏に乳幼児に多くみられる。弛緩性水疱ができ,拡大していくが,全身症状はほとんど伴わない。黄色ブドウ球菌の産生する表皮剝脱毒素がデスモグレイン1を特異的に分解するため,表皮上層で棘融解を起こし,弛緩性の水疱を生じさせる。
痂皮性膿痂疹は年齢・季節を問わない。周囲の発赤を伴う膿疱が急速に出現し,急速に痂皮化する。痂皮は厚く堆積し,下床に膿汁がたまる。咽頭痛,発熱,所属リンパ節腫脹などの全身症状を伴うことが多い。
比較的限局した水疱性膿痂疹では,外用抗菌薬でも治癒が可能である。汎用されているゲンタマイシンには黄色ブドウ球菌の半数以上が耐性のため,オゼノキサシン,ナジフロキサシン,フシジン酸ナトリウムの外用を選択する。
広範囲の場合はβ-ラクタム系経口抗菌薬を選択する。マクロライド系経口抗菌薬も有効である。3日たっても効果がない場合はMRSAによる可能性が高いため,市中感染型MRSAに有効な薬剤に変更する。ミノサイクリン塩酸塩,ホスホマイシン,クリンダマイシン,キノロン系,ファロペネム,ST合剤,リネゾリドに有効性が示され推奨されるが,副作用や保険適用の制約がある。
ミノサイクリン塩酸塩は歯牙着色・エナメル質形成不全の副作用のため,8歳未満には原則禁忌である。キノロン系抗菌薬は関節障害の副作用のため,16歳未満には使用しにくい。ノルフロキサシンのみ,小児の表在性皮膚感染症に保険適用である。ST合剤やリネゾリドは膿痂疹には保険適用がない。
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