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【文献 pick up】HF例のeGFRが「30」を切ってもMRAは無条件に中止すべきでない?―RCT個別データ併合解析/ JACC誌

宇津貴史 (医学レポーター)

登録日: 2024-05-16

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心不全(HF)例がミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)服用中、eGFR30 mL/分/1.73m2を切った場合、一律にMRAを中止すべきだろうか。大規模ランダム化比較試験(RCT)データは否定的なようだ。グラスゴー大学(英国)の松本新吾氏らが5月12日、Journal of American College of Cardiology誌で報告した。本解析は同日、リスボン(ポルトガル)で開催されていた欧州心不全学会で"Late Breaker" として報告された。

なおわが国の「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」では米国と異なり、eGFR<30 mL/分/1.73m2HF例に対するMRA開始を必ずしも禁忌としていない。また、治療中にeGFRが低下した場合については言及がない。

【対象】

今回解析対象となったのは「EF35%」の症候性HFに対するMRAの有用性を検討したRCT参加の4400例中、観察開始時にeGFR「<30 mL/分/1.73m2」だった例を除外した4355例である。"RALES"試験(スピロノラクトン)と"EMPHASIS-HF"試験(エンプレレノン)参加例から抽出した。

【方法】

これら4355例を、ランダム化後に1度でも「eGFR30 mL/分/1.73m2」となった腎機能重篤「低下」例(295例)と「非低下」例(4060例)に分け、MRAの「有効性」と「安全性」を検討した。

【結果】

・有効性

腎機能重篤「低下」/「非低下」を問わず、MRA群はプラセボ群に比べ「CV死亡・HF入院」(1次評価項目)リスクが有意に低くなっていた。すなわち補正後ハザード比は、「低下」例で0.6395%信頼区間[CI]:0.560.71)、「非低下」例で0.6595%CI0.430.99)だった。「低下」の有無による交互作用P値は0.87である。

発生率で比較すると、MRA群はプラセボ群に比べ、腎機能重篤「低下」例で「34.8 vs. 55.9」/100人年、「非低下」例で「15.2 vs. 24.5」/100人年だった。

・安全性

「総死亡」リスクも、MRA群ではプラセボ群に比べ、腎機能重篤「低下」例、「非低下」例を問わず有意に低下していた。

一方「治療中断」リスクは、腎機能重篤「低下」例、「非低下」例を問わず両群間に有意差はなかった。

ただし高K血症(>5.5 molL)リスクはMRA群で有意に高かった。発生率はMRA群とプラセボ群で腎機能重篤「低下」例が「16.6 vs. 3.0」/100人年、「非低下」例が「7.4 vs. 3.6」/100人年だった。

【考察】

松本氏らは「eGFR30 mL/分/1.73m2を下回ったというだけで機械的にMRAを中止すべきではない」と結論している。

RALES試験はSearle社、EMPHASIS-HF試験はPfizer社から資金提供を受けて実施された。

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