脳脊髄液減少症は,文字通り髄液が減少する病態である。通常は,外傷などの受傷後に急激に発症することが多い。脊髄レベルでの髄液の異常吸収や漏出によって生じる病態が考えられており,頭痛のみならず多彩な症状を呈することが知られている。
何らかの外傷を契機とした臨床経過や,頭部,脊髄MRIや脊髄MRミエログラフィーなどの画像的検査が,診断のポイントとなる。脳脊髄液減少症に出現する症状は,頭痛,めまい,嘔気,倦怠感,頸部痛の順に多く認められる。耳鳴りや聴覚異常,味覚異常の合併も稀でない。難治性で臨床経過の長い場合は,発症原因が特定できないことや,診断に難渋することもある。
治療は,保存的加療(安静や補液,水分補給)とブラッドパッチ(硬膜外自家血注入療法)が代表的である。経過から本症が疑われた場合,発症早期には保存的治療で治癒することが少なくないため,確定診断に至らなくても検討すべき治療である。また,補液が一時的にでも効果を示す症例は,脳脊髄液減少症の可能性を疑って治療を継続する。保存的治療での効果が乏しい症例に対しては,ブラッドパッチを行うことを検討する。
近年,ブラッドパッチの効果について知られるようになってきた。ブラッドパッチは硬膜外に自家血を注入し,髄液の吸収過剰を是正する(髄液の漏れを止める)治療である。治療成績は,部分改善を含めて半数以上に何らかの効果を認める。15歳以下の症例ではより有効率が高く,治療成績は若年者のほうが良好である。
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