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【識者の眼】「出産費用の見える化『出産なび』開設」稲葉可奈子

No.5226 (2024年06月22日発行) P.60

稲葉可奈子 (産婦人科専門医)

登録日: 2024-06-06

最終更新日: 2024-06-06

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妊婦さんが分娩施設を探せるサイト「出産なび」を厚生労働省が開設しました。

まず、このサイトはいわゆる「価格比較サイト」ではありません。無痛分娩できるのか、無痛分娩は24時間対応なのか、立ち会い出産はできるか、母子同室か否か、などが分娩施設ごとに様々で、それをこれまでは妊婦さんが一つひとつ調べないとわからなかったのを、希望の条件を入れるとマッチする施設リストがでてくる、というもの。各施設の詳細情報の中に、平均分娩費用も記載されている、という形です。

このサイトがつくられた背景には、2023年に出産育児一時金が増額されたときに、一部の分娩施設が分娩費用を上げたことを「便乗値上げ」と言われ、値上げ抑制のために費用の見える化を、などと言われたことがあります。しかし、このときの値上げはそもそも便乗ではなく、出生数が減っている中でこれまでと同じレベルの周産期医療を維持するには単価を上げざるをえないけれども、妊婦さんの自己負担をなるべく増やさないように各病院は努力しており、一時金が上がるタイミングくらいしか増額できなかっただけ、ということは広くご理解頂きたいと思います。

そしてでき上がったサイトを見る限り、決して価格を比較させるためのサイトではないことがわかります。分娩は施設ごとにサービスが本当に様々で、妊婦さんのご希望もいろいろあり、あくまで妊婦さんが希望に合う分娩施設を探すのをサポートするためのもので、値上げ抑制が目的ではないサイトになったと思います。

ただ、お産は何があるかわからないので、居住地にある程度近いことも大事で、価格だけを重視して遠くの病院を選ぶ、というような使い方はしないで頂きたいと産婦人科医としては願っています。

また、妊娠出産は予期しないことも起こりうるため、急遽大きい病院へ転院となることもあり、せっかく選んだのに想定と違うところでのお産になってしまった、ということもありえます。そこはぜひ妊婦さんと赤ちゃんの安全優先で、転院を受け入れて頂ければと思います。

出産については保険適用化も検討されていると報道されていますが、そちらはまだ具体的な話は出てきていません。もし、他科の先生で妊婦さんから「お産するならどこの病院がよいですか?」と質問を受けることがありましたら、「出産なびで検索してみるといいよ!」とお伝え頂けましたら幸いです。

稲葉可奈子(産婦人科専門医)[分娩サービス][平均分娩費用]

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