関節痛は,炎症,変性,結晶の沈着,感染,外傷などにより生じ,かつ複数の原因が関与する可能性がある。関節痛の評価の目的は,関節症状の原因を突き止め,その原因の鑑別診断を進めることである。関節痛の鑑別診断の大部分は,病歴と身体診察から得られる。
病歴聴取においては,まず外傷歴があるかどうかを確認する。その上で外傷が否定的である場合は,内因性疾患の鑑別を行う。疼痛が,関節から生じているのか,隣接する関節包,腱,靱帯,骨,筋肉から生じているのか,それとも内臓器官や神経根から生じているのかを判断する必要がある。
具体的な病歴聴取のポイントは,①発症時間,発症様式(急性発症か),症状の持続時間,疼痛の経時的変化,②症状のある関節の数,分布,対称性,③増悪寛解因子(安静時痛があるか),④関節外症状(発熱,悪寒,全身倦怠感など),である。
まず全身状態を確認する。関節痛を呈する疾患で最も緊急度が高いのは感染症であるため,敗血症の有無に注意して診療を開始する。発熱だけでなく,意識障害の有無,頻呼吸,頻脈,血圧低下に注意を払う。
診察では,正確な疼痛部位,熱感,腫脹の有無,関節可動域,筋力低下に加えて,関節部の近位および遠位の感覚障害や運動障害にも注意する。最も緊急度が高い急性化膿性関節炎では,急激かつ強い疼痛,関節液貯留,可動域制限などが認められる。
発熱を有する患者では,感染性疾患が原因で関節痛を生じている場合もあり(インフルエンザや髄膜炎など),症状や流行状況に応じた適切な感染対策を実施した上で診察することも重要である。
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