風疹ウイルスによる急性発熱発疹性疾患で,飛沫感染,接触感染で伝播する。潜伏期間は14~21日で,平均16~18日である。基本再生産数は5~7で,発症1週間前から発症後1週間頃まで周りへの感染力がある。3主徴は発熱,発疹,リンパ節腫脹であるが,3つともそろうのは約半数である。その他,咽頭痛や関節痛,咳,眼球結膜の充血などがみられる。不顕性感染が15~30%程度にみられる。稀に血小板減少性紫斑病,脳炎を合併することがあるが,予後は一般に良好である。
妊娠20週頃までの妊婦が風疹ウイルスに感染すると胎児にも感染して,出生児が先天性風疹症候群(congenital rubella syndrome:CRS)と診断されることがある。妊娠週数が早いほど,胎児への異常の出現頻度は高く,CRSの3主徴は白内障,難聴,先天性心疾患である。その他,低出生体重,精神運動発達遅滞がみられることがある。
発熱,発疹,耳後部や後頭部,頸部のリンパ節腫脹を認めた場合は,風疹(臨床診断例)として保健所に届出を行う。発疹は淡紅色紅斑で融合傾向を示さず,色素沈着を残さない。
似た症状の別の疾患が多く,伝染性紅斑,伝染性単核球症,薬疹,修飾麻疹,エンテロウイルス感染症,溶連菌感染症などとの鑑別が必要になる。そのため,風疹は地方衛生研究所で全例のPCR検査が求められている。症状出現後すぐの咽頭ぬぐい液からの検出率が最も高く,抗体ができはじめると血液からの検出率が急速に低下する。麻疹のように尿から長く検出されるという結果は得られていない。急性期の3点セット(EDTA加全血,咽頭ぬぐい液,尿)の確保と,保健所への届出が重要である。
風疹含有ワクチン接種歴と発症2~3週間前の行動歴を確認する。風疹含有ワクチンの接種歴が0~1回あるいは不明で,流行国への渡航歴がある場合は,直ちに管轄の保健所に届出を行うとともに急性期の3点セットを地方衛生研究所に搬送する1)。風疹IgM抗体は発疹出現後4日以降でないと陽性になっていないことが多いため,IgM抗体を確認してからの保健所届出は厳禁である。渡航歴がなくても,発症2~3週間前の発熱,発疹を認める人との接触,国内での風疹発生動向と本人の行動歴を確認し,疑わしい場合は保健所に届出を行う。
1962(昭和37)年4月2日~1979(昭和54)年4月1日生まれの男性は,子どもの頃に風疹含有ワクチンの接種を受ける機会がなく,これまで未罹患のことが多いため,この生年月日の男性に風疹の感受性者が蓄積している。2019~2025年3月までの6年間,上記生年月日の男性には,第5期定期接種として,全額公費で,風疹抗体検査と,抗体価が低い男性への風疹含有ワクチン(乾燥弱毒生麻しん風しん混合ワクチン:MRワクチン)の接種が実施されているが,接種率が低く,このままでは再び風疹の全国流行が発生することが危惧される。
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