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特集:終末期に役立つ薬物療法

No.5230 (2024年07月20日発行) P.18

今永光彦 (奏診療所)

登録日: 2024-07-19

最終更新日: 2024-07-17

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2000年順天堂大学医学部卒業。国立病院機構東京医療センター総合内科,大和クリニック,国立病院機構東埼玉病院内科・総合診療科医長などを経て,2021年10月より奏診療所に勤務。日本内科学会総合内科専門医,日本プライマリ・ケア連合学会認定医・指導医,日本在宅医療連合学会評議員,医学博士。

1 死亡前1週間に問題となる症状

・呼吸困難,食思不振や嚥下障害の症状は,死が差し迫るにつれて強くなる。
・死亡前1週間において過活動型せん妄があると,苦痛がより強い。

2 呼吸困難に対する薬物療法

・まずは治療を行うことにより症状の改善が望めるような合併症や病態が存在するかの評価を行う。合併症があった際に治療するかの判断は,医学的なメリットと治療負担のバランスを考えて行う。
・低酸素血症があれば,まずは酸素投与を行う。酸素投与を行っても改善しない場合には,モルヒネなどのオピオイド投与を検討する。
・低酸素血症がない場合には,オピオイド投与の良い適応となる。がん性疼痛と比較して少量で効果がある。

3 食思不振・嚥下障害が顕在化した際の輸液療法

・死亡前1週間の患者に対する輸液の効果や害に関するエビデンスは不十分である。
・「家族の希望」や「家族の心理的負担軽減」のために輸液が施行されることも多い。家族が輸液を希望する背景や心配ごとを傾聴した上で,「患者本人にとってどうか」を話し合うことが重要である。
・輸液開始時に,輸液の効果よりも害が強くなったときは,輸液の減量・中止を相談することをあらかじめ患者や家族に伝えておく。

4 過活動型せん妄に対する薬物療法

・せん妄の原因として,便秘や尿閉がないか確認する。
・過活動型せん妄に対する薬物療法を行うにあたっては,それぞれの薬剤の特徴を把握した上で薬剤の選択を行う必要がある。
・内服が可能かどうか,鎮静が必要かどうか,糖尿病合併の有無などで薬剤の選択をする。

1 死亡前1週間に問題となる症状

死亡前の症状をいかにコントロールするかは,苦痛少なく患者に最期を迎えてもらう意味でも,家族にとって穏やかな看取りという意味でも,重要であろう。本稿では,死亡前1週間の症状コントロールにおける薬物療法に焦点を当ててみたいと思う。

(1)疾患別にみた症状の頻度

まず,死亡前1週間においてはどのような症状が出るのであろうか。表11)~6)は,死亡前1週間に出現する症状の頻度について疾患別にまとめたものである。それぞれの文献は,診療セッティングや症状の評価方法(患者側の報告か医療者側の評価か,など)も異なるため比較には限界があるが,疾患による症状の違いを大まかに把握する上では参考になるであろう。疼痛は老衰では少ないものの,がんのみならず,心不全,運動ニューロン疾患でも頻度が高いことがわかる。また,呼吸困難は特にがんや運動ニューロン疾患で頻度が高いが,それ以外の疾患でもそれなりの頻度で出現している。食思不振は,がんや老衰で頻度が高い。

(2)症状の変化

それでは,これらの症状は死が差し迫るにつれてどのように変化していくのであろうか。呼吸困難,食思不振や嚥下障害の症状は,死が差し迫るにつれてどんどん強くなることが報告されている7)。また,死亡前1週間において,過活動型せん妄があると症状の苦痛がより強いという報告がある8)。過活動型せん妄は家族にとっても強い苦痛となることがある。

本稿では,終末期の症状の中でも,特に問題となることが多い呼吸困難,食思不振や嚥下障害,過活動型せん妄に関して,薬物療法を中心として記載していく。

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