前回連載(144)(7月6日号)で「骨太方針2024」を検討した時、私は以下のように書きました。〈「骨太方針2024」(原案)の(医療・介護・こどもDX)には、「医療・介護DXを推進し、医療費適正化の取組を強化するための必要な法整備を行う」との(私から見ると)とんでもない方針が書かれていました。医療DXの推進は、「骨太方針2022」「同2023」と同じですが、それが「医療費適正化」(医療費抑制)を目的とすると明記されたのは初めてです。〉
これを読んだ、若手医療政策研究者(医師)A氏から、以下の率直な疑問メールを頂きました。
〈医療費適正化はしばしば=医療費削減としてみなされてしまっていますが、本来的には、国民の健康保持推進と医療の効率的な提供の推進により、結果的に医療費の伸びを抑制することをめざすものであり、医療の質を落としたり、国民の健康レベルを落としてまで、医療費を削減することは医療費適正化とは異なることになります。〉(以下略。匿名での引用許可済み)。
A氏が根拠として挙げた文献は、第一期医療費適正化計画の「医療費適正化に関する施策についての基本的な方針」(厚生労働省告示第149号。2008年3月31日)で、そこでは「医療費適正化計画の基本理念」として、「(1)住民の生活の質の維持及び向上を図るものであること、(2)超高齢社会の到来に対応するものであること」が挙げられていました。
「医療費適正化」(政策・計画)が医療費抑制を意味しないとの主張は、印南一路氏(慶應義塾大学教授・当時)も早くからされています(同氏編著『再考・医療費適正化』有斐閣、2016等)。そこで、今回はこの点を検討します。