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涙道内視鏡の適応について

No.5232 (2024年08月03日発行) P.47

石岡みさき (みさき眼科クリニック院長)

岩崎明美 (大多喜眼科)

登録日: 2024-08-02

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  • 成人で流涙の訴えがあるとき,涙洗で通水が確認できなければ涙道内視鏡を行っている先生に紹介,ということでよいでしょうか。
    大多喜眼科・岩崎明美先生にご解説をお願いします。

    【質問者】石岡みさき みさき眼科クリニック院長


    【回答】

    【流涙は放置せず早めの治療につなげる。特に抗癌剤開始後に注意】

    涙道は涙を目から鼻へと流す通路で,内腔が狭いため加齢,感染,アレルギー,抗癌剤等の影響で詰まりやすいという特徴があります。以前は,「涙が多いのは治らない」という考え方が一般的で,目やにがひどい場合や急性涙囊炎の治療は,抗菌薬か「涙囊鼻腔吻合術(涙囊と鼻腔の間の骨を削り,バイパスを作る手術)」が主流でした。しかし,涙が多いことによるコントラスト視力の低下は,流涙の治療で改善することがわかっています1)。また,流涙は煩わしいため,その改善に取り組むことは重要です。

    涙道内視鏡は日本で2002年に開発され,2018年から保険適用となりました。先端の直径が1mm弱と小さく,解像度や焦点距離,手術技術の発展により,涙道内の狭窄や閉塞,異物,腫瘍等を詳細に観察できるようになりました2)。通水が可能な場合でも,涙道内視鏡で観察すると内腔が針穴ほどに狭くなっていることも少なくありません。涙道内視鏡で観察しながら涙道を開放しますが,単に開放するだけでは再閉塞が起きるため,数カ月間チューブを留置して内腔を広げます。以前は「シリコンチューブ挿入術」と呼ばれていましたが,最近は「涙道内腔再建術」3)(保険名は涙管チューブ挿入術)と呼ばれています。ブジーを使って手の感覚で開放することも可能ですが,涙道内視鏡を使うと正確な観察ができるため治癒率が向上し,約8割は治癒します。治癒率が9割以上の涙囊鼻腔吻合術に比べるとやや成績は劣るものの,侵襲が少なく,抗凝固薬を中止する必要もなく,術後の生活制限もほとんどないのが利点です。

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