洞結節自体の自動能の異常あるいは洞結節から心房への伝導障害によって,徐脈とそれに伴う症状を呈するものである。老化によって生じる洞結節あるいはその周囲組織の変性と機能低下によるものを一次性洞不全症候群,自律神経系・薬剤・電解質・甲状腺機能などによって二次的に洞機能が抑制されたものを二次性洞不全症候群と定義する。
持続性徐脈を呈する場合には,息切れ・労作時の倦怠感などの心不全類似の症状が起こる。一過性の心停止の場合,心拍出量が急激に低下し脳血流量が減少した結果,めまい,ふらつき,眼前暗黒感,失神などの症状を引き起こす。一般的に洞不全症候群で致死的になることはなく,QOLの低下はきたすが生命予後は悪くない。
心電図における徐拍化(心拍数50回/分末満),P波の消失と一過性の心停止がみられる。なお,洞不全症候群は心電図所見からRubenstein分類の3つの型にわけられる。すなわち「Ⅰ型は持続性で説明不能な(原因の同定できない)心拍数50bpm未満の洞徐脈,Ⅱ型は洞停止と洞房ブロック,Ⅲ型は徐脈頻脈症候群であり,発作性上室性頻拍・心房粗動・心房細動といった上室頻拍後に徐脈をきたすもの」と定義されている。
治療方針を決定する上で最も重要なのは,徐脈に伴う症状の有無である。徐脈に伴う自覚症状があり,除去(あるいは治療)可能な原因が存在しなければ,ペースメーカ治療の適応である。ペースメーカの適応となる最低心拍数や心停止時間の基準値は存在しないが,一般的には1日総心拍数が6万5000回以下,あるいは6秒以上の心停止に伴う症状があれば考慮する。
洞結節は自律神経などの影響を強く受けるため,自律神経に影響を及ぼす状況や薬剤の有無をチェックする必要がある。たとえば,反射性(血管迷走神経性)失神の場合,洞停止による著明な心停止をきたすことがあり,β遮断薬の影響で持続的な徐脈をきたすこともある。徐脈をきたした際の状況や,前兆の有無および内服薬の確認を怠ってはならない。
モニター心電図やホルター心電図などで,洞機能不全による徐脈が記録されても,無症状であれば緊急的な治療は必要ない。睡眠中の5秒程度の洞停止も同様である。
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