株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【文献 pick up】薬剤によるTG低下はPCSK9阻害薬でもCVリスクを低減せず:ODYSSEY OUTCOMES追加解析/JACC誌

宇津貴史 (医学レポーター)

登録日: 2024-09-16

最終更新日: 2024-09-13

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

トリグリセライド(TG)高値は心血管系(CV)リスクだと認識されているが[Lawler PR, et al. 2020]、フィブラートを用いたTG低下療法はCVイベントを抑制しない[Rodriguez-Gutierrez R, et al. 2023]。しかしこれはフィブラートに限った話ではなくPCSK9阻害薬を用いたTG低下でも同じようだ。一方、生活習慣改善によるTG低下にはCV保護作用があるかもしれない。大規模ランダム化比較試験"ODYSSEY OUTCOMES"の追加解析の結果として、ソローカ大学(イスラエル)のDoron Zahger氏らが910日、J Am Coll Cardiol誌で報告した。

【対象】

ODYSSEY OUTCOMES試験の対象は、直近1年間に急性冠症候群(ACS)の既往があり、忍容最大用量のスタチン服用下で脂質異常(LDL-C≧70mgdLなど)を認めた18924例である。なお「TG400mgdL」例は除外されている。PCSK9阻害薬群とプラセボ群にランダム化され、二重盲検法で2.8年間(中央値)観察された。

【方法】

今回の解析では、「試験開始時TG値の高低」「試験開始後のTG低下幅」それぞれが「MACE発生リスク」に及ぼす影響が検討された。MACEの内訳は「冠動脈疾患死・心筋梗塞・入院を要する不安定狭心症・脳梗塞」である。

【結果】

・「試験開始時TG値」とMACEリスク

試験開始時TG値「≧150mg/dL例の「MACE発生率」はPCSK9阻害薬群、プラセボ群とも、「<150」群に比べ高値傾向を認めた(PCSK9阻害薬群:10.3 vs. 9.1%、プラセボ群:12.4 vs. 10.2%)。しかし諸因子補正後のハザード比(HR)で比較すると有意差とはならなかった(PCSK9阻害薬群:1.0495%CI0.90-1.20、プラセボ群:1.120.99-1.28)。

一方TG値を連続変数として扱うと、10mgdLの高値に従い、若干だがMACEリスクは有意に上昇していた(HRPCSK9阻害薬群:1.0081.003-1.013、プラセボ群:1.0071.001-1.014)。

・「試験開始後のTG低下幅」とMACEリスク

「試験開始後のTG低下幅」とMACEリスクの関係は、PCSK9阻害薬群とプラセボ群で異なっていた。すなわち、プラセボ群では試験開始4カ月後TG値「10mgdL」低値に伴い、その後のMACEリスクは若干ながらも有意に低下していた(HR0.98895%CI0.982-0.995)。一方PCSK9阻害薬群では試験開始4カ月後TG値「10mgdL」低値に伴うMACEリスクの有意低下は認められなかった(HR0.9990.987-1.010)。

【考察】

プラセボ群で「TG低下」と「MACEリスク低下」が相関した理由としてZahger氏らは、生活習慣改善とスタチン服用のアドヒアランスが良かったためではないかと考察。一方、PCSK9阻害薬群でそのような相関を認めなかったのは、LDL-CとアポB蛋白濃度が十分に低下した場合、TG低下によるCVリスク減少作用は期待できないのではないか、としている。

本解析はRegeneron Pharmaceuticals, Incから資金提供を受けて実施された。また解析対象となったODYSSEY OUTCOMES試験は、同社とSanofiから資金提供を受けた。

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

公立小浜温泉病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
勤務地: 長崎県雲仙市

公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top