熱性けいれん(熱性発作)は,通常38℃以上の発熱に伴って生じる発作性疾患であり,主に生後6~60カ月の乳幼児期に起こる。わが国での有病率は7~11%と頻度が高いが,基本的に神経学的予後良好な疾患である。本稿ではガイドライン1)をふまえて記載する。
発熱に伴い,けいれん性あるいは非けいれん性(脱力,一点凝視,眼球上転など)の発作を生じる。そのうち髄膜炎などの中枢神経感染症や代謝異常症,そのほかの明らかな発作の原因がないものと定義され,てんかんの既往のあるものは除外する。
熱性けいれんは単純型と複雑型に分類される。複雑型熱性けいれんは①焦点発作の要素がある,②発作が15分以上持続する,③同一の発熱機会に発作が複数回反復する(通常は24時間以内である),のいずれかを満たすものであり,いずれも該当しないものは単純型熱性けいれんである。そのため問診では発作様式や回数,経過時間などを確認する。
発作時の初期対応と予防投与について述べる。
発作が持続している場合には,気道の確保,呼吸と循環の安定を確立した上で速やかな鎮痙を試みる。特に発作が5分以上持続する場合には薬物治療を考慮すべきであるが,薬剤による呼吸抑制に十分な注意が必要である。来院時に発作が停止しており,意識清明な状態で経過から単純型熱性けいれんと判断される場合には,ルーチンでの血液検査や髄液検査,画像検査は必須ではない。
全身状態が不良で重症感染症を疑う場合,遷延性の発作や発作後も意識障害が持続する場合,髄膜刺激症状や大泉門膨隆など中枢神経感染症を疑う所見がある場合などでは,髄膜炎などの重症感染症や脳炎・脳症なども鑑別疾患に含めて精査を考慮する。
入院の適応は,発作が遷延し抗けいれん薬の投与が必要となった場合,髄膜刺激症状や大泉門膨隆など中枢神経感染症が疑われる場合,全身状態が不良あるいは脱水所見がある場合,意識清明な状態が確認できない場合,同一の発熱機会に発作が複数回みられる場合などで考慮し,家族の不安や地域の診療体制も併せて総合的に判断する。
残り1,012文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する