厚生労働省より、65〜69歳世代の就労率が50%を超えたことが報道されました。筆者自身もこの世代に含まれており、そろそろ退任したい、などと考えていたところに現実を提示された気分になりました。
毎年夏に公表される簡易生命表によれば、コロナ禍による影響から回復した2023年の平均寿命より5年短い平均寿命の時期は、男性でも女性でも30年近く前でした。したがって、平均寿命の延伸は30年程度かけて5年ということになります。
一方、これまで、体育の日(現、スポーツの日)頃に毎年公表されるスポーツ庁による体力・運動能力調査の結果で、低下は脱したもののなかなか元に戻らない子どもの体力・運動能力に対して、高齢者の体力・運動能力は着実に向上していることが報告されていました。体力合計点でみると、現在の70〜74歳の平均点は15年前の65〜69歳の平均点に相当することになります。個々のデータがある中で、握力は世代間の差が大きく、最も古い公表値(25年前)の5歳若い年齢群の平均値に現在の平均値は達してはいませんが、上体起こしでは現在の70~74歳(男性)の平均値は10年前の65〜69歳の平均値に匹敵しています。したがって、体力についてはおおよそ10〜15年で5歳分若くなっていると言えそうです。
日本老年医学会は既に2017年にワーキンググループの報告書として、「高齢者を75歳以上とし、准高齢者を65〜74歳」という提言をしていました。2024年6月、さらに『高齢者および高齢社会に関する検討ワーキンググループ報告書2024』が発表され、様々なデータとともに高齢者の定義に関する提言の根拠が述べられています。
なお、『令和5年版高齢社会白書』の第1章:高齢化の状況、第3節:高齢者の健康をめぐる動向についてにおいて、健康状態の自己評価で65〜69歳(男性)の19.4%は「良くない」か「あまり良くない」と回答し、同年齢群(女性)の9.7%を大きく上回っています。70〜74歳群では、同じ回答が男女とも21〜22%と同程度であり、70歳になるまでは働くべき、と一概に言うことはできないように感じます。
私自身は5年前に比べると、快適に走ることができる距離や時間は確実に短くなっていると実感し、膝が痛くなったり腫れたり、という身体トラブルも増えていることを痛感しています。また、数年前のように、平日通常の勤務、週末スポーツ関連の現場帯同や学会参加などで数カ月休みなく活動することは難しくなったと感じ、適切に休養日を設定するようにしています。
鳥居 俊(早稲田大学スポーツ科学学術院教授)[高齢社会][就業][高齢者の体力]