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脊髄小脳変性症,多系統萎縮症[私の治療]

No.5240 (2024年09月28日発行) P.48

柚木太淳 (岡山大学学術研究院医歯薬学域脳神経内科学)

石浦浩之 (岡山大学学術研究院医歯薬学域脳神経内科学教授)

登録日: 2024-09-29

最終更新日: 2024-09-24

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  • 脊髄小脳変性症は,小脳や脊髄の異常による小脳性運動失調を主症状とする神経変性疾患である。孤発性と遺伝性が知られており,孤発性の脊髄小脳変性症は,小脳性運動失調のみを呈する純粋小脳型(皮質性小脳萎縮症)とその他の症状を合併する多系統障害型(多くは多系統萎縮症)に分類される。遺伝性の脊髄小脳変性症の多くは常染色体顕性遺伝形式であるが,一部は常染色体潜性遺伝形式である。現在,顕性遺伝疾患が40以上,潜性遺伝疾患が30以上知られている。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    小脳性運動失調によるふらつきや歩きにくさ(体幹失調),しゃべりにくさ(slurred speech,断綴性言語,爆発性言語),手足の使いにくさ(四肢失調)が認められる。多系統萎縮症は小脳性運動失調に加えパーキンソン症状,自律神経症状(便秘,排尿障害,起立性低血圧など),錐体路徴候などを合併する。遺伝性の脊髄小脳変性症は原因遺伝子により錐体路症状や認知機能低下,てんかん,不随意運動など様々な症状を合併する。症状は進行性であるが,原因疾患によって経過はまちまちである。歩行障害が進行し歩行不能となることもある。また,嚥下障害が進行すると誤嚥性肺炎を繰り返したり,経口摂取困難となったりすることもある。

    【検査所見】

    一般の採血では異常はみられない。頭部MRIにて小脳萎縮を認める。多系統萎縮症では小脳に加えて橋や中小脳脚,被殻などに萎縮を認める。脳血流シンチグラフィでは小脳に血流低下を認めることが多い。病歴や診察所見,頭部MRIなどの所見などを総合して診断される。遺伝性の脊髄小脳変性症に関しては,日本で報告の多い顕性遺伝のMachado-Joseph病/脊髄小脳失調症3型(SCA3),SCA6,歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA),SCA31などは保険診療で検査が可能である。続発性の小脳失調症の原因として,慢性アルコール中毒,薬物中毒,感染症に伴う小脳炎,代謝障害,自己免疫性小脳炎,傍腫瘍性症候群が挙げられる。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    根治的治療は確立されておらず,対症療法が中心となる。ふらつきに対してはタルチレリンが使用される。リハビリテーションも有効性が報告されており,推奨される。多系統萎縮症に関しては様々な症状を合併するため,症状に合わせて対症療法を行っていく。

    たとえば,パーキンソン症状に対して抗パーキンソン病薬が用いられる。自律神経症状に関しては,便秘に対して各種緩下剤が,起立性低血圧に対して昇圧薬が使用される。排尿障害に関しては薬剤も使用されるが難治なことも多く,自己導尿や尿道カテーテル留置が必要になることもある。

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