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糖尿病や肥満のある人のスティグマをなくすには?〜小谷紀子(国立国際医療研究センター糖尿病内分泌代謝科)【この人に聞きたい】

No.5240 (2024年09月28日発行) P.6

小谷紀子 (国立国際医療研究センター糖尿病内分泌代謝科)

登録日: 2024-09-27

最終更新日: 2024-09-25

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医療者の言葉でセルフスティグマが生じる恐れも
糖尿病や肥満のある人の声に耳を傾け、
言葉を大切に使い、一人ひとりに合ったケアの提供を


こだに のりこ:1993年大阪大学大学院理学研究科生理学専攻博士前期課程修了後、製薬会社で医薬品の開発に携わっていたが、1型糖尿病発症を機に医師をめざす。2009年慶應義塾大学医学部卒業。同大医学部腎臓内分泌代謝内科勤務を経て、2020年より現職。日本糖尿病学会・日本糖尿病協会アドボカシー委員会委員。

糖尿病や肥満のある人に対するスティグマ(社会的偏見による差別・烙印)が問題になっている。スティグマをなくすためにはどうしたらよいのか。糖尿病専門医であり1型糖尿病の当時者としてスティグマの解消に取り組む、国立国際医療研究センター糖尿病内分泌代謝科の小谷紀子氏に聞いた。

「生活習慣病」としたことがスティグマの一因

─糖尿病のある人のスティグマが生じた背景を教えて下さい。

日本では、1996年に成人病が「生活習慣病」になりました。生活習慣を改善すればよくなる病気があるというのは、当時は画期的だったと思いますが、糖尿病などの発症には遺伝要因、外部環境要因も複雑に関与しています。

当時も公衆衛生審議会の「生活習慣に着目した疾病対策の基本的方向性について(意見具申)」では、「『病気になったのは個人の責任』といった疾患や患者に対する差別や偏見が生まれるおそれがある」と指摘しています。WHOは同じ疾患群を非感染性疾患と呼んでいますが、日本では生活習慣病としたために、懸念されたことが起こってしまいました。

もう1つ、スティグマを考える上で重要なのが行動免疫システムです。我々の体には病原菌を排除する免疫システムがありますが、行動面にもそれが本能として備わっています。集団を守るために、病原菌に対して嫌悪感や回避行動が生じ、集団規範を維持するために、偽陽性を許容する行動が生じます。その代償として偏見や差別が生まれます。ハンセン病、結核、HIVなどがその対象になった過去がありますが、ここに糖尿病や肥満が含まれてしまったと考えられます。我々医療者の責任も大きいのではないでしょうか。

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