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身体症状症の病態と治療について

No.5241 (2024年10月05日発行) P.47

舘野 歩 (東京慈恵会医科大学医学部精神医学講座准教授)

名越泰秀 (京都第一赤十字病院精神科(心療内科)部長)

登録日: 2024-10-04

最終更新日: 2024-10-01

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  • 身体症状症への対応に精神科医は日々苦慮していると思います。そこで,身体症状症の病態,そして有効な初期対応や薬物療法について,京都第一赤十字病院・名越泰秀先生にご解説をお願いします。

    【質問者】
    舘野 歩 東京慈恵会医科大学医学部精神医学講座准教授


    【回答】

    【不安,強迫的とらわれに対する精神療法,薬物療法が重要である】

    身体症状症の病態としては,米国精神医学会(American Psychiatric Association:APA)による精神疾患の診断基準・診断分類であるDSM‒5‒TRTM 1)の診断基準Bにあるように,「身体症状または健康上の関心に関連した,過度の思考または感情または行動」と考えられます。具体的には,正常あるいは些細な身体感覚を恐ろしいものと考えることや,身体疾患へ結びつけるという思考の偏りがあります。また,「活動が身体に悪影響を与えるのではないか」といった感情面の問題がみられます。さらには,自分の身体に異常がないか確認するための頻回の受診行動やドクターショッピング,あるいは症状の悪化への恐怖による活動の回避といった行動面の問題がみられます。これらは端的に言えば,身体に関する不安や強迫的とらわれによるものと考えられます。

    このような病態に対する適切な初期対応に関しては,まず症状によるつらさには共感し,過去の診療への不満や精神科への紹介に対する怒りがある場合はそれらを扱うことが必要です。

    そして,患者への説明は,身体症状が,身体疾患によるものではない(または,身体疾患から生じるものよりも強く,あるいは広範に生じている)ということに関しては,あいまいにしておくべきという意見もあります。しかし筆者は,精神科的治療への受け入れをスムーズにするために,可能な限り明確に説明したほうがよいと考えます。筆者はBarskyのsomatosensory amplificationの概念2)を用いて,「身体に注意を向けるほど身体症状が強まる」と説明することが多いです。また,「ストレスによる症状」という説明がしばしば行われていますが,安易に行うべきではありません。ストレスが無関係な場合も多いですし,過度にストレスを回避してしまうことにつながるからです。

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