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【識者の眼】「これからの医師における海外留学」勝田友博

No.5245 (2024年11月02日発行) P.63

勝田友博 (聖マリアンナ医科大学小児科学准教授)

登録日: 2024-10-16

最終更新日: 2024-10-16

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私事となってしまうが、筆者は2016〜17年と2023年の2回、米国へ留学する機会を得た。留学中の収入は、海外留学先からの給与、奨学金・助成金、国内所属先からの給与など、契約条件により様々であると認識しているが、筆者の場合は、2回とも国内所属先である聖マリアンナ医科大学から日本円で支払ってもらった。

当然、海外留学中の総収入は国内で勤務していた時期と比較し大幅に減少したため、1回目の留学時はスターバックスのコーヒーが高くて飲めず、毎日自宅で格安のコーヒー豆を使ってコーヒーを淹れて職場で飲んでいた。

このように、世間的には華やかに見えるかもしれない医師の海外留学の現実は、私にとっては非常に厳しいものであり、一緒に渡米した妻には本当に苦労をかけてしまった。2回目の留学の前には、同じ轍を踏まないように事前に貯蓄をし、留学期間も7カ月と異例の短期間とするなど、万全の準備をした……つもりであった。ところが、留学直前から未曾有の円安が進行し、2016〜17年当時は1ドル100〜120円程度であった為替は、2023年には1ドル140〜150円程度まで下落してしまい、さらに米国における物価高も追い打ちをかけ、結局2回目の留学でもスターバックスのコーヒーは7カ月間で2回しか飲めなかった。

我が家の経済的困窮は、偏に事前の計画的な貯蓄不足や、留学先からの給与を取得できなかった私の力不足に尽きるが、一方で2回の留学は私にとってはまさにpricelessな経験と出逢いをもたらしたのも事実である。

もちろん海外留学に見出す価値は個々で異なることは十分理解しており、他者に強いるものではないが、今後、海外留学や国際学会参加を希望する日本人医師が為替や物価の変動など、外的な影響を受けずに安心して留学するためには、私のような国内からの給与に依存するのではなく、留学先に存在する限られた給与取得可能なポジションを他国の優秀なライバルと奪いあっていく必要があるのかもしれない。

勝田友博(聖マリアンナ医科大学小児科学准教授)[海外留学][円安

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