株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

心室細動[私の治療]

No.5248 (2024年11月23日発行) P.35

栗田隆志 (近畿大学病院心臓血管センター教授/センター長)

登録日: 2024-11-20

最終更新日: 2024-11-19

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 心室細動(ventricular fibrillation:VF)は心室内に不安定なリエントリー回路が複数個発生し,無秩序な興奮(痙攣状態)となる。心電図では不定で幅の広いQRS波形の連続を認め,心拍出量はほとんどなくなり,急速に心肺停止に陥る。即座に治療を行わなければ救命が困難となる。

    ▶診断のポイント・私の治療方針・処方の組み立て方

    診断・治療は,事前のVF予測(専門家への紹介と一次予防),発症時の対応,除細動(蘇生)後の治療(二次予防)の3つのステージにわけて方針を立てる。

    【事前のVF予測(専門家への紹介と一次予防)】

    VFの多くは心筋梗塞の発生急性期に生じるが,初回発生を事前に予測することはきわめて困難であり,発生後は目撃者による心肺蘇生や除細動に委ねるしかない。しかし,心臓突然死を予測する因子として,①心機能の低下(左室駆出率≦35%),②NYHA心機能分類Ⅱ以上の心不全,③非持続性心室頻拍,④失神の既往,⑤心電図異常(ブルガダ症候群,QT延長症候群)などが知られている。これらを認める場合は植込み型除細動器(ICD)の適応について専門家へ紹介する。

    【発症時の対応】

    VFが持続している場合は心肺停止状態で発見される。発見時は心肺蘇生術を施行しつつ,一刻も早く電気ショックを与える。院外発生では目撃者による自動体外除細動器(AED)の施行が切り札となる。診断は発作中の心電図記録が基本となる。

    【除細動(蘇生)後の治療(二次予防)】

    除細動後は,①復帰時の心電図,②心筋逸脱酵素,③冠動脈造影,④心エコーなどを駆使して原疾患を特定する。VFの原因となりうる疾患は,①急性心筋梗塞,②冠攣縮型狭心症,③心筋症(拡張型,肥大型),④陳旧性心筋梗塞,⑤ブルガダ症候群とその類似疾患(特発性VFやJ波症候群),⑥先天性あるいは後天性QT延長症候群,⑦心臓サルコイドーシス,⑧不整脈原性右室心筋症,⑨心筋炎,⑩カテコラミン誘発多形性心室頻拍などである。

    【治療の一般的注意&禁忌】

    突然死リスクを疑う所見を認めた場合は,専門家へ紹介する。

    除細動後は可能な限り12誘導心電図を記録する。心電図連続モニター監視は必須で,VFの再発に備える。可能な限りQT延長症候群を否定し,アミオダロンの静注による予防を行う。また,青壮年期のやせ形の男性でアミオダロンが無効な場合はブルガダ症候群を疑う。

    除細動後も血行動態が破綻している場合は補助循環の適応,低酸素脳症が疑われる場合は低体温療法を検討する。原因が明らかで,それが除外できる場合(たとえば,抗不整脈薬が原因のQT延長によるVFなど)は原因に対する治療を優先する。しかし,恒常的にVFの基質を有すると判断された場合は,ICDの適応を中心とした戦略を立てる。

    残り1,902文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    公立小浜温泉病院

    勤務形態: 常勤
    募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
    勤務地: 長崎県雲仙市

    公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
    現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
    2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
    6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

    当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
    2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
    又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

    ●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
    今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top