筋ジストロフィーは⾻格筋の壊死・再⽣を主病変とする遺伝性筋疾患で,50以上の原因遺伝⼦が解明されてきている。⾻格筋障害に伴う運動機能障害を主症状とするが,関節拘縮・変形,呼吸機能障害,⼼筋障害,嚥下機能障害,消化管症状,⾻代謝異常,内分泌代謝異常,眼症状,難聴,中枢神経障害等を合併することも多い。多臓器が侵され,集学的な管理を要する全⾝性疾患である。告示番号113で指定難病に定められている。
代表的な病型としては,ジストロフィン異常症(デュシェンヌ型/ベッカー型),肢帯型,顔⾯肩甲上腕型,エメリー・ドレイフス型,眼咽頭筋型,福⼭型,筋強直性ジストロフィーなどがあり,それぞれ発症年齢や経過,臨床症状に特徴がある。
診断には筋生検が行われるが,小児例などはMLPA法やエクソーム/全ゲノムシーケンスなど遺伝学的検査で診断される場合も増えている。一部の遺伝学的検査は保険適用となり,民間検査会社が検査を受託可能な病型も多くなっている。免疫学的治療が有効な免疫介在性壊死性ミオパチー,酵素補充療法が有効なポンペ病,さらに遺伝子治療が実用化されている脊髄性筋萎縮症でも,肢帯型などと類似した臨床病型を示す例があるため,慎重な鑑別が必要である。
疾患特異的な遺伝子治療,分子病態に根差した治療開発が活発に行われているものの,残念ながらいずれの病型においても根本的な治療法はない。デュシェンヌ型に対する副腎皮質ステロイドは,歩行可能の期間を約1年延長する。運動機能の維持と骨格変形の予防を目的とし,過剰使用や廃用を避けるリハビリテーション,補助呼吸管理や⼼臓ペースメーカーなどの集学的治療が重要である。二次性の拘縮・変形の予防,合併症として誤嚥性肺炎,尿路感染症などのリスク低減に努める。住環境の整備,装具処方やIT活用,学校や職場との調整を通じて個人の状況に配慮した活動・社会参加を,多職種連携を通じて支援することも重要である。筋強直性ジストロフィーに関しては別稿に譲る。
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