骨軟化症は骨組織の石灰化障害を特徴とする疾患である。純粋なビタミンDやカルシウム不足よりも,様々な要因により慢性的な低リン血症が生じていることが原因の場合が多い。筋力低下や骨痛が主な症状となるが,特異的な症状はない。骨粗鬆症の診断を受けた人の中に本疾患患者が隠れているケースもあるので,鑑別疾患として常に念頭に置く必要がある。
骨軟化症は,本来は組織的な類骨の増加で診断すべきである。画像所見は,大腿骨や恥坐骨など疲労骨折の生じる場所に帯状の透亮像として現れるLooser’s zoneや,骨シンチグラフィで肋骨への多発集積が特徴である。また,骨密度は若年成人平均値の80%未満となることが多い。
まず,骨型ALP異常高値が確認されたら,「くる病・骨軟化症の診断マニュアル」1)のフローチャートに従って鑑別していく。低リン血症がなければ,血清25(OH)Dが20ng/mL未満(ほとんどの症例は一桁)のビタミンD欠乏性であることが多い。低リン血症があった場合は血清FGF23を計測し,30pg/mL以上ならFGF23関連低リン血症性骨軟化症と診断できる。フローチャートにはないが,二次性副甲状腺機能亢進症に陥っている場合も骨軟化症をきたしていると言ってよい。ファンコニ症候群や腎尿細管性アシドーシスをきたしていることもあり,治療には専門の知識が求められる。
ビタミンD欠乏が原因の場合は,サプリメントでビタミンDを摂取するのが理にかなっているが,腎障害を合併する場合は活性型ビタミンD製剤を処方する。活性型ビタミンD製剤にカルシウムのサプリメントを併用すると,腎障害を起こす場合もあるので注意が必要である。低リン血症,副甲状腺ホルモン(PTH)高値の場合は,腎臓内科・内分泌内科と連携しながら治療を進める。FGF23関連低リン血症性骨軟化症は,ブロスマブが投与できるようになってから合併症が軽減でき,効果も得られるようになったが,遺伝性の低リン血症性くる病の成人症例(骨軟化症症例)に対しては,どのような症状があったら開始するのか,いつまで投与するのか,という点に関して統一見解はまだない。
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