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急性脳炎(成人)[私の治療]

No.5258 (2025年02月01日発行) P.42

﨑山佑介 (鹿児島大学大学院医歯学総合研究科神経病学講座脳神経内科・老年病学講師)

髙嶋 博 (鹿児島大学大学院医歯学総合研究科神経病学講座脳神経内科・老年病学教授)

登録日: 2025-01-31

最終更新日: 2025-01-28

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  • 脳炎は脳実質の炎症状態であり,感染性または自己免疫性の原因によって生じる。脳症,痙攣発作,局所神経障害を引き起こし,後遺症や死に至ることもある。原因としてウイルス性が最も大きな割合を占めるが,ここ10年で抗神経抗体症候群の関与に対する認知度が高まっている。

    ▶診断のポイント

    発熱,頭痛,意識障害に加えて,人格変化,精神症状の急速な進行,新たな痙攣発作または局所性中枢神経系症状があり,髄液細胞増多または脳炎を支持するMRI所見の少なくとも1つを満たすときに急性脳炎を疑う。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    まずは,速やかに気道・呼吸・循環を確保する。ついで,意識状態を評価,血糖を調べる。臨床症状から,①脳ヘルニアが疑われる場合(視神経乳頭浮腫,一側または両側瞳孔固定・散大,除脳および除皮質肢位,チェーン・ストークス呼吸,固定した眼球偏位),②意識障害,③局所神経症状,④痙攣発作,⑤免疫不全状態,⑥60歳以上の患者,では脳脊髄液(CSF)検査を行う前に,必ず頭部CTもしくはMRIを実施する。

    治療には原因療法と対症療法がある。急性脳炎ではウイルス性脳炎の割合が最も高く,ついで自己免疫性脳炎が多いため,両者を念頭に治療方針を立てる。

    ウイルス性脳炎の原因として,単純ヘルペスウイルス(HSV)と水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の頻度が高いため,両者の髄液real-time PCRを提出して速やかにアシクロビル点滴を開始する。近年はFilmArray髄膜炎・脳炎パネルによって,HSVやVZVを含めた14種類の病原体PCRを同時に調べることもできるが,HSVの検出感度はreal-time PCRよりも劣ることに注意する。

    自己免疫性脳炎は抗NMDA受容体抗体,抗LGI1抗体などの抗神経抗体によって特徴的な臨床症状を呈する。自己免疫性脳炎を疑わせる症状や検査所見があれば,副腎皮質ステロイド投与を考慮する。

    対症療法では,痙攣発作が5分以上続けば「てんかん重積状態」と診断して治療を開始する。頭蓋内圧亢進を伴う脳浮腫を合併している場合は,脳ヘルニアを回避するために抗脳浮腫療法が勧められる。

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