日本能率協会(中村正己会長)は2月4日、「2024年度 病院経営課題の実態調査」の結果を公表した。回答病院の約4割で外来・入院収入がコロナ禍前の水準に戻っていないことに加えて、人件費・光熱費の高騰や材料費・委託費・人材派遣手数料の値上がりなど、病院の置かれている厳しい経営環境が浮き彫りになった。
調査は24年11月に8141病院を対象としてWebアンケート形式で実施。有効回答数は223病院だった。病床規模別内訳は、99床以下が74病院、100〜199床が80病院、200床以上が69病院となっている。
分析対象となった223病院の前年度の外来と入院収入の状況をみると、コロナ禍前の水準に戻らないと回答した病院の割合は、外来が43.5%、入院が42.2%で、ともに4割を超えた。これに対してコロナ禍前の水準を上回ったと回答した病院は、外来が26.5%、入院が31.8%だった。
病床規模別の内訳をみると、収入が戻らないと回答した割合は99床以下の病院が最も高く、外来は54.1%、入院は44.6%に及ぶ。逆にコロナ禍前よりも収入が増えた病院の割合は200床以上で最も高く、外来・入院ともに34.8%となった。
現在の経営課題では、「人件費の増加」と回答する病院が最多となり、全体の75.8%を占めた。次いで多かったのが、「人件費以外の経費の増加」(50.2%)、「職員確保難」(49.3%)、「診療需要の低下」(26.5%)など。働き方改革の推進では時間外労働の課題に、「医師数の不足」(41.7%)と「医師以外の職員の不足」(43.0%)を挙げる病院が、いずれも約4割あった。これらの結果から、人手不足解消に向けて採用強化に乗り出した結果、かえって人件費や人材派遣会社への手数料の増加を招き、経営が悪化するという悪循環に陥っていることがうかがえた。
医療DXの取り組みについては、分析対象病院の78.9%が重要性を認識していたものの、「積極的に取り組んでいる」と回答した病院は17.0%にとどまった。また、医療DXに積極的または少し取り組んでいると回答した病院のうち、効果を実感できている病院は28.7%と3割に満たなかった。